映画も音楽も――“音と機能にこだわった”ヤマハ新AVアンプレビュー(2/4 ページ)

» 2005年04月15日 00時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

リファインで自然な音場感となったシネマDSP

 さて早速、ヤマハ得意のシネマDSPの音からチェックしてみた。試聴に使ったのはDTSが配布しているデモ用DVD「DTS SURROUND. 9」。この中から「HERO(ARROWS)」、「マスターアンドコマンダー」、「キルビルVol.2」、「イノセンス」、「シングアロング/ブルーマングループ」をチョイスしている。

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 まず感じるのが、不自然な反射音/残響音を感じなくなった事だ。以前のシネマDSPはDSPが生成するエフェクト音が目立ちすぎるという印象があった。DSPモードが“Si-Fi”ならばまだいいが、“Spectacle”ともなると、演出過多がやや耳につくようになる。

 だが、そうしたシネマDSPの悪癖も、2003年末に発売されたDSP-Z9から明らかに変わった。DSP-Z9のレビューでも述べたが、自然で違和感のない控えめな印象になっているのだ。これならばSi-Fi以外のモードでも、映画のタイプに応じて各モードを選んで楽しむことができるだろう。

 “キルビルVol.2”の棺桶に閉じこめられるシーンや“イノセンス”の食品店内のシーンは、元から間接音が多いが、シネマDSPがかかった状態でもさほど間接音が過多という印象を受けず、自然に映像の世界へと入り込める。

 ただしCDなど2チャンネル音楽ソース向けのHi-Fi DSPの印象は以前と変わらなく、特にホール系のエフェクトは耳につきやすい。DSP-Z9ではこのあたりは改善されていたポイントだが、ヤマハによると「DSPの能力的な問題から、低価格機では自然な音場効果を演算で引き出すのが難しい」のだという。

 とはいえ、音楽はそもそもストレートで聴く方が好ましい結果が得られるもの、と考えるならば弱点と言えるような事ではない。それよりもシネマDSPに自然さが加わったことで、巧みに濃度の高い音場を作り出す“シネマDSP本来の長所”が活きてきたように感じる。

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位相問題を解決した新型YPAO

 さて次に、最上位モデルのDSP-AX757だけが備えるYPAOについても、その効果を確かめておこう。YPAOの詳細については、昨年7月、DSP-Z9をレビューした記事に詳しく書いているが、DSP-AX757に搭載されているのは、そのYPAOの簡易版だ。簡易版といっても、音質的に不利という意味ではない。DSP-AX757のYPAOは、自動イコライザーの動作モードが「フロントスピーカーへの近似モード」のみに限定しているのだ。

photo 付属の測定用高精度マイクを使って理想のシアター環境へオートチューニングできるYPAO

 ただしDSP-Z9でも、フロントスピーカーに近似させるモードが、もっとも良い結果となった。これはメインスピーカーの音を加工せず、スピーカーの良さを殺さないためだろう。つまりDSP-AX757のYPAOは、DSP-Z9でベストだったモードが選択されているので、実用上の問題はないと考えていいわけだ。

 もっとも、昨年DSP-Z9を評価した時点では、YPAOの自動イコライザーが音場に悪影響を及ぼす可能性があった。DSP-Z9のYPAOは、10点ものパラメトリックイコライザーを駆使して周波数特性を完全に補正してしまうため、周波数特性に極端なディップやピークがあるスピーカーをサラウンドに使っていると、位相反転が発生してフロントスピーカーとの間で音を打ち消し合うケースが発生していた。

 しかしヤマハによると、その後、YPAOの自動イコライザー機能を改良し、完全に周波数特性を合わせようとするのではなく、特性が近くなるように大まかなカーブを合わせ込むよう、アルゴリズムを変更したそうだ(実際には昨年末に発表した製品から変化している)。

 “HERO(ARROWS)”で矢が飛び交うシーンをチェックする限り、以前に感じた「リスニングポイントの周辺で定位する音源の存在感が薄れる現象」は発生しなくなった。YPAOを用いず、周波数特性はスピーカーセッティングで合わせ込む方が良い結果となると思うが、そうしたノウハウを持たない多くのユーザーにとってみれば、自動で設定してくれるYPAOほど便利なものはない。位相の問題がなくなったことで、積極的に利用を勧めたい機能へと進化した。

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