サムスンの32型液晶テレビ「LN32R51B」は、12万9900円という手頃な価格にもかかわらず、HDMI端子を装備している点で注目を集めている。“これからのテレビ”に必須のHDMI端子について解説していこう。
現在あるいは今後、テレビを購入する際に無視できない要素となるのが「HDMI端子」の有無だ。この件に関しては巷でも喧伝されているため、重々承知している方も多いに違いない。しかし、そもそもHDMIとは何なのか? そして、なぜHDMIが今後不可欠となるのか? ここではそれを解説していこう。
HDMIとは、High-Definition Multimedia Interfaceの略で、高品位マルチメディアインタフェースを意味している。つまり、これまでビデオデッキとテレビなどのAV機器間の接続に用いられてきた、コンポジット映像端子やS映像端子、あるいはD端子(コンポーネント映像)に置き換わるものだ。
コンポジットやSでは、いわゆる480iの標準画質しか送れないが、HDMI端子では720p、1080i、あるいは1080pといったハイビジョン映像の入出力にも対応している。しかし、それだけではD端子と変わりはない。最大の違いは、従来の端子のようなアナログの映像信号ではなく、デジタルでの信号伝送を行う点だ。
HDMIのベースになっているのは、PCと液晶ディスプレイの接続に使われているDVIである。デジタル伝送による映像品質面での優位性は、DVIとアナログRGBの差を例に挙げるまでもなく明確だろう。ちなみに、DVIで取り扱う信号は基本的にR/G/Bとなるが、HDMIではテレビとの親和性を確保するため、Y/U/Vが基本となっている(R/G/Bにも対応)。
また、とりわけ、ユーザーにとって使い勝手がいいのは、映像だけではなく音声も同時に伝送が可能という点だ。つまり、映像・音声の接続が1本のケーブルで済ませられる。もちろん、音声もデジタル伝送だ(S/PDIF)。しかも、端子自体もDVIよりもずっと小型である。
さらに、もうひとつ重要な要素がHDMIには含まれている。それはコピー保護システムへの標準対応だ。液晶プロジェクターに装備されているDVI入力端子の中には「HDCP対応」とうたわれているものが存在するが、HDMIでもコピー保護機能としてHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)を装備している。
われわれユーザーにとっては、コピー保護機能の必要性を感じることはないが、映画配給会社など映像を提供する側はその有無を非常に重要視している。実際、一時は「次世代光ディスクでは、ハイビジョン映像のアナログ・コンポーネント映像出力を全面的に不可とする」という話も持ち上がっていた。この措置は現時点ではいったん棚上げされた格好となっているが、2011年以降はどうなるかわからない状況だ。つまり、コピー保護機能を持たないアナログ・コンポーネント映像出力では、将来的にハイビジョン放送が観られなくなる可能性があるのだ。
こうした動向をふまえて現時点でテレビを選ぶ際に、HDMI端子がある製品とない製品とでは、どちらを選択したほうが今後も安心なのかは言うまでもないだろう。もっとも、なるべく高い品質で映像を堪能したいと考えるのなら、デジタル伝送に対応したHDMIはもはや“必須”といえる。
ただし、この新しいAVインタフェースを利用するためには、当然ながら送り手側と受け手側の双方がHDMI端子を備えている必要がある。DVDプレーヤーにも搭載製品は存在するが、高品位マルチメディアインタフェースとしての真価を発揮できる送り手は、やはり、デジタルハイビジョン放送の録画・再生に対応したDVD/HDDレコーダー、Blu-ray Discレコーダー、D-VHSビデオデッキといった機器だろう。
一方、受け手となるテレビに関しては、HDMIへは徐々に対応しているという状況だ。最近発売された製品であれば、たいていは装備しているようだが、すべてというわけではない。特に低価格製品や小型画面サイズではコストの面で搭載を見送るケースも多いようだ。
しかし、普及価格帯の製品でもHDMI対応テレビがまったくないわけではない。サムスンの32型液晶テレビ「LN32R51B」は、12万9900円という価格ながらHDMIを搭載済みだ。さらに、26型の「LN26R51B」や、23型の「LN23R51B」にも、しっかり装備されている。
では、HDMIでの接続を行うには、実際にどのような手順が必要なのだろうか。そこで、ここではサムスンの32型液晶テレビ「LN32R51B」と日立製作所のハイビジョンHDD/DVDレコーダー「DV-DH1000W」を接続してみた。まず必要なのは(当たり前のことだが)HDMIケーブルである。テレビやレコーダーには、コンポジットやSケーブルが付属していることが多いが、D端子用ケーブルやHDMIケーブルはさすがに同梱されていない場合がほとんどだ。
HDMIケーブルは大手家電店や量販店で入手できる。価格は品質や長さにより、ピンからキリまであるが、1〜2メートルのものなら3000〜4000円程度から購入可能だ。それ以上の長さでは、3メートル、5メートルといったタイプも見つかるだろう。さらに、7メートル、10メートルといったロングタイプも存在する。
接続に際しては、設定などはほぼ必要ない。1本のケーブルをテレビ側とレコーダー側の双方の端子へ接続してやれば、特に何もしなくとも映像と音声が出力されるだろう。端子への抜き差しも実にスムーズだ。ちょうどPCのUSB端子に似た感覚だが、HDMIではそれにも増して抜き差し時に力を入れる必要がない。
接続の際に特に設定の必要がないのは、今回試用したレコーダー(DV-DH1000W)のHDMI出力がデフォルトで「自動」になっており、自動的に1080iモードが選択されるためだ。試しに「DV-DH1000W」のHDMI出力設定を、「720p固定」「480p固定」に変更してみると、それぞれ「1280×720/60Hz」「720×480/60Hz」の表示解像度に切り替わった。
現行DVDを再生する場合には「480p固定」にしてもいいわけだが、「自動」(1080i)のまま出力した場合と映像を比べても、違いはほぼ見受けられない。つまり、デジタルハイビジョン放送を観る際にも、DVDで映画を観る際にも、特に設定は気にする必要はなく、デフォルトの「自動」のままにしておけばいいというわけだ。
また、別記事にも書いたが、HDMI経由でのデジタル接続と、D端子経由でアナログ・コンポーネント接続した場合では、やはり映像に明確な違いが見受けられる。HDMI接続のほうが、輪郭や色の描き分けが、より明瞭で、グラデーションも滑らかな印象だ。
こうしたデジタル放送対応DVD/HDDレコーダー以外にも、ソニーの家庭用ハイビジョンビデオカメラ「HDR-HC3」にHDMI出力が装備されるなど、すでにHDMI端子が活躍する場面は広がりつつある。さらに今後は、次世代光ディスクプレーヤー(HD DVDやBlu-ray Disc)、新型家庭用ゲーム機「PlayStation 3」など、幅広い映像機器にHDMI出力が装備されていく予定だ。
こうした状況を考慮すれば、数年後、いや、ともすると1年も経たないうちに、HDMIの必要性が現時点とは比べものにならないほど高まっているだろうことは想像に難くない。まだ必要ないのか、それともすでに必須なのか。その答えはもはや誰の目にも明らかだろう。
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提供:日本サムスン株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年3月31日