「YP-T9」は日本サムスンのカード型メモリプレーヤー。厚さわずか11ミリというスリムなボディには、音楽はもちろん、動画再生やFMラジオ、ボイスレコーダーに加えて携帯電話との連携が極めて実用的なBluetoothまで搭載した“全部入り”の製品だ
日本サムスンの「YP-T9」はカード型のフラッシュメモリプレーヤー。同類のフォルムを持つ製品は各社から販売されており、“カード型フラッシュメモリプレーヤー”と表現するとやや陳腐な印象になってしまうが、本製品は11ミリというボディにポータブルプレーヤーに考えられるほぼすべての機能を搭載した「全部入り」プレーヤーだ。
搭載されている機能は、音楽再生を筆頭に動画再生、FMラジオ、画像/テキストビューワー、ボイスレコーダー、3種のミニゲームと多種多彩。加えて、Bluetoothによる通信機能を備えており、携帯電話との連携やPCとのファイル転送までも行える充実ぶりだ。レビューを通じて、本製品の魅力に迫ってみよう。
ボディカラーは先行して販売されているYP-K5を連想させるつややかなブラックを基調としているが、そのサイズは42.6(幅)×83(高さ)×11(厚さ)ミリ、49グラムと大幅に小型軽量化されている。名刺入れほどの厚さしかないので、胸ポケットやジャケットの内ポケットに入れておいても違和感はないだろう。
操作インタフェースとしては、本体下部中央に選曲やメニュー、音量調節といった操作を行う十字キー(中央は決定ボタン)が配置され、右側面には再生/一時停止、メニュー、BACK、A-Bリピート/録音のボタンが、左側面にはホールドボタンが用意されている。側面のボタン類は大型とは言えないが、カッチリとしたクリック感もあり、指先で探るだけでも容易に操作できる。
正面には1.8インチ(176×200ピクセル)のTFTカラー液晶が用意されている。液晶はポータブルプレーヤー用とは思えないほど明るく、コントラストも高いので非常に視認性が良い。メインメニューはアニメーション表示されるのだが、カチカチと小刻みにキー入力しても描画が遅れる様子はなく、サクサクと表示される。
上部側面にはヘッドフォン端子とストラップホール、マイク。底面にはPCとのシンクと充電に利用する独自端子が設けられている(PC側はUSB端子を利用する。充電もPCのUSBから行う)。電源には内蔵のリチウムポリマー充電池を利用し、約3.5時間の充電で約30時間の音楽再生が行える。
再生可能な楽曲ファイル形式はMP3/WMA/OGGの3種類。対応ビットレートはMP3が8Kbps〜320Kbps、WMAが8Kbps〜320Kbps、OGGがQ1〜Q10。最近ではHDDの大容量化が進んでいることもあり、高ビットレートで楽曲を保存している人も多いはずで、320Kbpsまで(OGGはQ10まで)の対応はうれしいポイントと言える。
WMAのDRMはWindows DRM9までの対応なのでNapsterなどの定額制サービスは利用できないが、付属転送ソフト「Samsung Media Studio5」ないしWindows標準の「Windows Media Player」を使わずともドラッグ&ドロップで転送/再生可能だ(転送後に本体で「ライブラリアップデート」を実行する必要あり)。最近は対応ソフトを利用しないと転送できないプレーヤーが大半だが、本製品ならば「自宅と職場のPC双方でシンクしたい」といった要望にも応えてくれる。
動画の再生も可能だ。対応する形式は独自のMPEG-4(.SVI)のみとなっており、Samsung Media Studio5での変換が必要となる。Samsung Media Studio5はMPG (MPEG)/AVI/WMV/ASF/MP4/RM(RMVB)/MOV/SMFなどに対応するほか、解像度も自動的に本製品の液晶解像度にマッチするよう変換される。
変換速度は利用するPCのプロセッサパワーによってかなり左右されるが、.MP4などMPEG-4系ファイルからの変換はファイルの仕様上それなりに時間がかかってしまう。テレパソで録画したテレビ番組などを持ち出したいと考えるならばMPEG-2で録画する、または、解像度を落とすなどの工夫が必要になるだろう。
転送が完了すれば、音楽/動画が楽しめる。再生/一時停止ボタンの長押しが電源のON/OFFとなり、あとはメインメニューを上下キーで操作し、音楽ならば「ミュージック」、動画ならば「ビデオ」を十字キーの右(あるいは十字キーのセンターボタン)で選択すればよい。「ミュージック」を選択すれば、「アーティスト」「アルバム」「トラック」「ジャンル」「プレイリスト」の各項目が現れ、「ビデオ」ならばファイル名の一覧が現れる。
操作については上下キーで項目選択、右キーあるいはセンターボタンで決定、左キーあるいは側面のBACKボタンで一階層戻るとインタフェースが統一されており、このルールさえ把握していれば、操作に戸惑うことはない。また、上下キーは長押しすることで1項目ずつではなく画面単位の送りが可能で、項目が多くなるアーティストやトラックからの楽曲選択もスムーズに行える。
MENUボタンは操作中の状況にあわせた項目を呼び出すためのボタンで、音楽再生中ならば再生速度の変更や各種エフェクトの選択、動画再生中ならばブックマークの挿入などが行える。音楽エフェクトについては同社のホームシアターシステムに採用されている音場技術を応用した「DNSe」(Digital Natural Sound engine)が搭載されている。DNSeは立体感を与えるともに低音を強調し、高音のゆがみも低減する。
本製品には立体感を与える「3Dスタジオ」「3Dステージ」「3Dクラブ」がプリセットされているほか、「ロック」「ハウス」「ダンス」「バラード」「R&B」「クラシック」「ジャズ」の各イコライザ設定が用意されている。立体感と低音強調については自由に設定し、ユーザー設定として保存できる。
そのほかにはワールドワイド対応の録音機能付きFMラジオやボイスレコーダー機能も搭載する。ラジオ録音についてはタイマーこそ備えていないが、リスニング中に側面の録音ボタンを押せば即座に録音可能なほか、ビットレートも96/128/160/192kbpsと4段階に切り替え可能となっており(ファイル形式はMP3)、ちょっとしたメモ代わりからエアチェックまで幅広く利用できる。
簡単なものだが野球ゲームの「Baseball」、アクションゲームの「Pizza Delivery」、パズルゲームの「Honeybee」と3種類のゲームもプリインストールされている。シンプルなものだが、単純なだけに電車での移動中などでは気軽に楽しめる。
本製品の最大の特徴がBluetoothの搭載だ。搭載するBluetoothのバージョンは1.2で、HFP(ハンズフリーフォン)/HSP(ヘッドセット)/FTP(ファイル転送)の各プロファイルをサポートする。HSPを利用したBluetoothヘッドフォンへの無線音楽伝送や、FTPを利用したPCとのファイル転送も便利な機能だが、日常のシーンでもっとも活躍するのがハンズフリーフォン機能だろう。
Bluetoothを搭載した携帯電話と組み合わせる(ペアリング)させることで、音楽を聴いている最中でも携帯電話への着信を本製品のヘッドフォンで確認できるほか、内蔵マイクでの通話や、着信へのリダイヤルまでも行えるのだ。電車で移動中、携帯電話に着信があったけれど音楽を聴いていたので気が付かなかった――なんて経験は誰でもあるはず。大切な着信を逃さない、極めて実用的な機能といえる。
設定は簡単だ。メニューから「Bluetooth」を選択して機能をONにしたのち、対応携帯電話で接続先を検索。すると「YP-T9」という機器を見つけるはずなので、そこで登録作業を行うだけだ。この状態にしておけば、携帯に着信すると呼び出し音がヘッドフォンから流れ、着信相手の番号が液晶に表示される。
YP-T9はそのスリムボディに音楽再生から動画再生、FMラジオ、Bluetooth機能までを搭載したまさに“全部入り”と呼ぶにふさわしいポータブルプレーヤーだ。最近では音楽再生機能を搭載した携帯電話も多く登場しているが、プレーヤーとしての自由度やメモリ容量、バッテリーの持続時間などを考えると、プレーヤーはプレーヤー、携帯電話は携帯電話として携帯することに魅力を感じるひとも多いのではないだろうか。
携帯電話と連動させるには携帯電話側にもBluetoothの搭載が必要となるが、最近では搭載機種もかなり増えている(ソフトバンクモバイルの携帯電話は、多くがBluetoothを搭載している)。それに、これだけの小型軽量かつ薄型のプレーヤーで“全部入り”は例がない。携帯性に優れた音楽/動画プレーヤーが欲しい、または携帯電話のBluetoothを活用したいというユーザーにお勧めの1台だ。
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提供:日本サムスン株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年6月30日