ヤマハの11.2chフラッグシップDSP AVアンプ「DSP-Z11」が登場した。これまで培ってきた「シネマDSP」をベースに、新コンセプトとアプローチを盛り込んだ超ド級モデルだ。ピュアオーディオ思想から誕生した新世代機を、オーディオビジュアル評論家の小原由夫氏が語る。
2007年のAV界の話題のひとつが、HDオーディオの本格的な立ち上げだ。高品質なサラウンド音声が、フルHD対応の映像信号とともに1本のHDMIケーブルで伝送できる利便性は図り知れない。それはこれまでのAVシーンになかったハイクォリティーな絵と音を、著しい操作性の向上と合わせて私たちに提供してくれるのである。
今春以降、国内オーディオメーカーは、HDオーディオ対応のAVアンプを相次いでリリースしてきたが、これまで培ってきた「シネマDSP」をベースに、新たなコンセプトとアプローチを盛り込んだ超ド級モデルをリリースしてきたのが、ヤマハである。
DSP-Z11という型番が与えられた本機は、11世代目のフラッグシップ機という意味と、11ch(チャンネル)のパワーアンプ搭載というダブルネーミングになっている。
本機の先代に当たるのは、2004年発表のDSP-Z9。9chのパワーアンプを搭載したそれは、ヤマハがピュアオーディオ的発想から取り組んだ記念碑的モデルと私は認識しているが、DSP-Z11はその思想をさらに推し進め、ヤマハAVアンプがこれまでに提案してきたフィーチャーの「質」をさらに徹底的に磨き上げたものと感じている。
過去の多くのAVアンプは、ピュアオーディオ的視点から見たクォリティがうたい文句ほどにはともなっていなかった。それは、アナログ回路だけでなく、デジタル回路やビデオ回路、マイコンなど、キャラクターの異なる回路がひとつの筐体に密集して同居しているため、ともすると自らが発したノイズに曝されて回路間の相互干渉を引き起こしていたからだ。ひいてはそれがS/Nの劣化を招き、再生音の品位を汚していたのである。
したがって、AVアンプを高音質に仕上げるには、設計者にはさまざまなノウハウ、それも高度なスキルが不可欠である。その難易度はピュアオーディオアンプ以上といえよう。とりわけ、大部分のスペースを占有するパワーアンプがさらされる環境には、非常に厳しいものがある。特に今回は、通常よりも4ch多い11chのパワーアンプを積んでいるのだから、さらに厄介である。
しかしヤマハは、そうした厳しい状況下にあっても自らを鼓舞し、AVアンプとしては非常に稀な電流帰還型パワーアンプの全チャンネル採用に踏み切った。
電流帰還型という方式は、一般的な電圧帰還型に比べて位相補償回路が軽くできる点が特徴で、ハイスルーレートで安定した特性が得やすい。その一方で、回路の部品点数は多くなり、設計者の腕が要求されるため、これまでは高級なピュアオーディオアンプで見受ける程度で、多チャンネルが必須のAVアンプではあまり前例がなかった。
ヤマハはDSP-Z11で、敢えてその難関にチャレンジしたのである。
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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年1月6日