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» 2008年10月30日 10時00分 公開

秘密はLSIにあり:地デジをより美しく――東芝「REGZA」の超解像技術に迫る (2/2)

[本田雅一,PR/ITmedia]
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東芝の超解像技術「レゾリューションプラス」

 東芝のREGZAが搭載した「レゾリューションプラス」も、再構成法による超解像技術の1つ。同社は昨年来、各所でCellプロセッサを用いた超解像技術をデモンストレーションしてきたが、そこで得られたノウハウを投入し、ハイビジョン放送に対する超解像処理を行う専用LSIを開発したのである。

 ハイビジョン放送をフルHD液晶パネルに表示する際に超解像処理がなぜ必要なのか? という疑問を持つ読者もいることだろう。しかし、ハイビジョン放送の多くは1920×1080ピクセルの解像力を持っていない。地上デジタル放送は横方向の解像度が1440ピクセルしかなく、地上デジタル放送よりも高画質なBSデジタル放送でも、TBS系の「BS-i」、映画専門チャンネルの「スターチャンネル」は横1440ピクセルで放送している。

 そこでデジタル放送をより美しく再現するために、フルHDパネルの解像度に合わせて横1440ピクセルの放送に超解像処理をかけて表示するのがレゾリューションプラスというわけだ。

 東芝の超解像技術は、アップコンバートした映像をいったん元のサイズへと縮小し、元画像と比較。そこで出た差分(この差分はアップコンバート時の間違いと推測できる)を参照し、アップコンバート映像に補正をかけるという手法で実現している。縮小方法や差分の評価、評価結果の出力映像への反映方法などが東芝独自のノウハウとなる。

photo

 また、東芝は従来の高画質化処理を超解像処理と組み合わせることで、トータルの画質を高めるという手法を用いている。超解像処理用に開発された新チップには、輪郭(エッジ部分)やテクスチャーを検出する回路が組み込まれた。エッジ部分に再構成法で超解像処理を行うとノイズを浮き立たせる可能性があるからだ。超解像処理はテクスチャー部分にのみ施し、エッジ部分は輝度変化の速度を高める処理(LTI処理)を別途行う。そして明確なテクスチャーがない(滑らかに色や輝度が変化している)部分には、何の処理も行わない。

photo 元映像からテクスチャー部、エッジ部、平坦部を検出し、それぞれに適した処理を行う

 いち早くLSI化できたのは、Cellによって実装の検討を繰り返し行ったことで、ソフトウェアで処理のチューニングを追い込み、処理のモデル化を素早く進めることができたからだろう。このLSIが組み込まれたメタブレイン・プレミアムは、REGZA新モデルの「FH7000/Z7000/ZH7000シリーズ」に搭載されており、一部のハイエンド製品だけでなく多くの製品でその恩恵を実感することができる。

photophoto 元画像(左)と「レゾリューションプラス」をオンにした画像(右)。明らかな違いがある

新LSIに組み込まれた高画質のためのエッセンス

 一方、レゾリューションプラスを実現した超解像LSIには、実は別の高画質化機能も組み込まれている。それは「色階調クリエーション」機能である。

 従来のメタブレインにも、輝度信号を滑らかにすることで疑似階調の発生を抑える機能が組み込まれていたが、色の変化については処理が行われていなかった。例えば夕焼けのシーン。オレンジの太陽からあい色の空へとつながるグラデーションなどでは、元の放送やソフトに入っている色信号の階調が不足して疑似階調が発生することがある。

 超解像LSIはこの問題にもメスを入れ、色階調の不足を自動的に補うのである。前述したように、超解像LSIには輪郭やテクスチャーを検出する機能が組み込まれているので、輪郭でもなく、テクスチャー情報もないエリアを正しく認識できる。そこでその部分に対して色階調クリエーションをかけるわけだ。

 加えてメタブレインの中核部にあるソフトウェアを変更し、新たに周波数ヒストグラム検出機能が加わっている。これは周波数帯域、つまりどの程度の精細度の成分が、どのぐらい映像全体に含まれているかという統計情報を検出するものだ。このヒストグラムを用いて、メタブレインはシャープネスを周波数ごとに自動的に最適な量だけかける。

 これが「新シャープネス・オプティマイザー」という機能で、シャープな映像を実現しつつ、ノイズの成長を抑えることが可能になった。具体的には、映像内の動きに伴って現れる、ザワザワとしたザラツキ感を解消してくれるのである。

 メタブレインについては、昨年も、そして一昨年も取材してきたが、まさか毎年、これほど新しい処理が組み込まれるとは思いもよらなかった。もちろん、その間には2つの追加LSIが加わっているが、メタブレイン自身の懐の広さがなければ、毎年の成長など望めない。

 高画質化のために何が必要なのか、それを検討して生まれたメタブレインの中核エンジンは、幾度ものアップデートと機能追加を経て、とうとう超解像技術によるハイビジョン放送のさらなる高精細化にまでたどり着いた。まさに“熟成”という言葉が、メタブレイン・プレミアム、そしてそれを搭載するREGZAにピッタリと当てはまる。

“半導体のチカラ”が示す意味

 REGZAのキャッチフレーズの一部になっている“半導体のチカラ”。映像メディアがデジタル化し、映像処理を行うLSIが与える映像への影響力が大幅に増えたことに対して、東芝が出した1つの回答が、自らがもっとも得意とする半導体技術を生かすことだった。

 しかし、新しいLSIを作れば高画質になるという単純な話ではない。東芝のデジタルテレビが急速にその力を付けたのは、その開発のアプローチが違うからこそなのである。

 通常はテレビ向けに高性能なLSIが開発され、それを商品としてのテレビ開発を行う部隊で料理する。しかし、この方法では実際にテレビを開発する現場のノウハウを生かすことができない。

 メタブレインが優れているのは、まずテレビ開発の現場から、デジタル時代に画質を改善するために、どのような機能、能力が必要なのか。どんなことを映像処理LSIの中でやりたいと考えているのかを発信し、半導体設計を行う技術者と共同で必要なLSIの仕様を決めているからだ。

 どんなに高速なLSIを使っても、必要な機能、能力がなければ、画質向上には直結しない。まず“画質を上げるために何が不足しているのか”を検討してからLSIの設計を行う。このプロセスがあるからこそ、長い間、成長し続ける強固なプラットフォームが出来上がったのだ。

 “半導体のチカラ”という言葉は、単に高速な、大規模な、高機能なLSIといったことを示しているのではない。半導体のチカラをいかに使いこなし、実際の製品の魅力へと昇華させるのか。そこにこそ、東芝が持つ本来の“半導体のチカラ”が存在する。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年11月26日