三菱電機の“REAL LASERVUE”(リアル レーザービュー)は、赤色レーザーとシアン色LEDをバックライトに採用し、色再現性を向上させた新機軸の液晶テレビ。しかし、直進性が高いレーザー光をどのように取り込み、活かしたのだろうか。そして実際の効果は? 「画質の鬼」ことデジタルメディア評論家・麻倉怜士氏が、三菱電機開発陣に迫る。
今どき珍しい、“とんがったテレビ”が登場しました。
三菱電機の“REAL LASERVUE”は、その名の通り、レーザー光をバックライトに活用した液晶テレビです。色純度の高い赤色レーザーと、緑と青を効率よく発光する新開発のシアン色LEDを用い、液晶テレビの色再現範囲を拡大するという斬新な技術です。
しかし、レーザーといえば、SF映画でおなじみの直進性が高い光ですから、画面を均一に照らさなければならないバックライトとの相性が良いとも思えません。そこにどんなメリットと仕掛けがあるのでしょうか?
そして見た目も他社製品とはひと味違います。ボディーカラーには、あまり見ない「ブロンズ」を採用し、画面の下には視聴者に向けて配置されたスピーカー。パンチンググリルの隙間から、先端素材として知られるカーボンナノチューブを利用したスピーカーがいくつも輝いて見えます。まるでスピーカーが存在を主張しているかのような意匠は、最近のデザイントレンドとは真逆のアプローチでしょう。
振り返ってみれば、三菱電機は“とんがったこと”をやって伸びてきたメーカーです。例えば液晶テレビの画面に艶っぽいグレア処理を施したのは三菱電機が最初(※1)。はじめの頃は、「映り込みが多い」と敬遠する人も多かったのですが、黒の沈み込みとコントラスト表現は従来の液晶テレビと一線を画すもので、現在では液晶テレビの標準的な仕様になりました。
薄型テレビにBlu-ray DiscドライブとHDDの両方を取り込んだ“3 in 1”の録画テレビを作ったのも三菱電機が最初です(※2)。そして今度は、他社がスピーカーを下向きに配置して隠そうとする中、スピーカーを前向きに配置しています。海外メーカーと同じことをやる会社が多い中、三菱電機は日本の市場だけに着目し、自社にしかできないこと、とんがったことをやろうとしています。
しかし、とんがった製品はリスクも抱えがちです。私は評論家という立場から、さまざまなメーカーの試作機を試聴する機会があり、開発者に対して、ときに助言し、ときには苦言も呈します。ITmedia Lifestyleの連載「麻倉怜士のデジタル閻魔帳」が、“閻魔帳”たる所以(ゆえん)です。過去には新しい技術をアピールしたいがためにやりすぎてしまい、多くの人に受け入れられないものになってしまった製品もありました。今回の三菱電機「REAL LASERVUE」の試作機に対しても、一度は「本当に製品化できるのか?」などと厳しいことを言いました。
さまざまな課題に対し、三菱電機の開発陣はどう対処し、製品として昇華したのか。その過程はまさに、困難との“勝負”です。開発担当者との対談と実際の試聴を通じ、久々に登場した“とんがった液晶テレビ”「REAL LASERVUE」の本質に迫ってみたいと思います。
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。ITmedia Lifestyleの連載「麻倉怜士のデジタル閻魔帳」では、その“歯に衣着せぬ”発言で一般読者の共感と業界関係者の畏敬を集めている。オーディオ機器も世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。
現在は評論活動のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動中。ちなみに最近のお気に入りは、「Steinway & Sons」(スタインウェイ・アンド・サンズ)のクラシックなグランドピアノ(1927年、ハンブルク製)。購入価格は絶対秘密。
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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年8月31日