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» 2012年07月23日 10時00分 公開

麻倉怜士の三番勝負:レーザーが液晶テレビの“色”を変えた? 鮮やかなシアターテレビ“REAL LASERVUE”の実力を麻倉怜士が探る (2/5)

[PR/ITmedia]
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麻倉氏: 私が最初に見たのは、昨年10月の「CEATEC JAPAN 2011」でした。展示ブースで大きなスペースをとっていたことと、画面に映し出された鮮やかな赤が印象的でしたね。ではまず、レーザー光とLEDを組み合わせるという発想に至った経緯から聞かせてください。ご担当は杉浦さんですね。

杉浦氏: はい。そもそものきっかけは2年ほど前でしょうか。京都製作所の製造部長が、「他社と同じことをやっていてはダメだ。うちの強みになる技術はないか?」と言い出したことです。当時はすでに米国でRGB(三原色)のレーザーを使ったリアプロジェクションテレビを展開していましたので、まずRGBのレーザーをバックライトに使うことが候補に挙がりました。

三菱電機先端技術総合研究所・映像技術部門統轄 IEEE Fellow 工学博士の杉浦博明氏(右)。新しいバックライトの開発に深く携わった

杉浦氏: これは実際に試作機も作ったのですが、やはりコスト的に製品化が難しくなってしまいます。一方、白色LED液晶テレビの映像というのは、どうも赤がさえません。朱色に見えてしまいます。そこで、「赤だけレーザーにすれば」という案が浮上したのです。

 幸い、三菱電機は兵庫県伊丹市の「高周波光デバイス製作所」で赤色レーザーを作っていました。これはDVD用で、波長が658や660ナノメートルと長く、ディスプレイに使うとドス黒い赤になってしまいます。そこで定格638ナノメートルという短い波長のレーザーをディスプレイ用に新開発しました。

 赤が良くなると、足りないのはシアンです。もちろん民生品ですから、国内テレビ高級機のゾーンに納めなければいけませんので、赤のレーザーと「シアン色LED」という組み合わせに至りました。通常の白色LEDは、青色LEDに黄色蛍光体をかぶせて白を取り出しますが、黄色の代わりに緑色蛍光体をかぶせると「シアン色LED」になり、青と緑の波長を効率よく取り出せます。

実際に使われている赤色レーザーとシアン色LED。蛍光体が緑色であることがよく分かる

麻倉氏: 例えば、赤色レーザーに青と緑のLEDを組み合わせることもできると思いますが、シアン色LEDになった理由は何ですか?

杉浦氏: それも検討しましたが、色を混ぜる過程で構造が複雑になってしまいます。結局、赤とシアンの組み合わせが、一番素直でシンプルにできることが分かりました。シアン色LEDに使う緑色の蛍光体は、良いものを選ぶと赤と緑の両方が良くなるメリットもあります。もちろんシアン色のLEDなど世の中に存在しませんから、われわれも蛍光体を調べたり、信頼性を検証したりと苦労しました。

麻倉氏: バックライトは、どのような構造になっているのでしょう。

杉浦氏: ご存じの通り、LEDの光は非常に広がりやすいものですが、一方でレーザーは直進性が高く、拡散しにくい光源です。それを一緒にすると当然、画面にムラができてしまいます。今回はエッジ式のバックライトになっていますが、実はCEATEC JAPANの試作機は、導光板の完成度が低かったので、画面にはムラが多く、背景の暗いコンテンツを選んでごまかしていたんです(笑)。

 もちろん、それでは商品になりませんので、新たに「補助導光板」を開発しました。一見、何の変哲もない透明な板に見えますが、微細加工により、光を広げることができます。さらに薄い板を伝搬する過程でLED光と同程度まで発散角を広げて導光板に入れ、シアン色LEDの光と混ぜる構造です。光学的に非常に精度の高い工作技術が必要になりますから、対応できる工場を探すのにも苦労しました。

補助導光板。レーザー光は金属部から照射され、導光板の中を伝搬する過程でLED光と同程度まで拡散するという

テレビの裏側から見た補助導光板の設置場所。拡散したレーザー光は、最後にプリズムで光の方向を曲げられ、LEDの光と混ざる仕組みだ

麻倉氏: レーザー技術だけでなく、光学技術もしっかり持っていないとダメだということですね。しかし、CEATECの赤はすごかったです。

杉浦氏: ついつい、アピールしたくて(笑)。コンテンツも営業に言って、とにかく赤を強調するように作りました。あのときはキャッチできたので良かったのですが、そのまま製品化するとバランスの崩れたものになってしまいます。きっと、どぎつくて下品なテレビになってしまうでしょう。

麻倉氏: なるほど。そこで画質のプロフェッショナル、安井さんの出番になるわけですね。その前に、新しいバックライトを作る過程で一番苦労した部分を教えてください。

杉浦氏: アナログ停波の特需が終わり、テレビに対する投資がやりにくい状況だったことです。新しいものを作ろうとしても、まず社内の理解を得なければなりません。そこで「CEATEC JAPAN 2011」に展示して消費者の反応を見ることにしました。本来なら、展示ブースのスペースは各事業部で“取り合い”になるのですが、宣伝部の協力で入り口近くの一番良い場所を大きく使わせてもらうことができました。そこで思わぬアワード(米国メディアパネルイノベーションアワード、デジタルイメージング分野)をいただき、弾みがついたと思います。


 このような開発努力は尊敬に値します。最近のテレビメーカーは、いかにコストを抑えるかといった努力ばかりしていますが、REAL LASERVUEはちゃんと新しい価値を加えるための開発です。三菱電機は液晶パネルこそ作っていませんが、研究所で開発した独自技術を最終製品にまで持ってくることができる。総合電機メーカーの強みでしょう。

 しかし、全く新しいバックライトを使いこなすのは大変です。私も試作機を何度か見る機会がありましたが、そのたびに画が変わっていました。三菱電機の技術陣は、この難問にどのように対処したのでしょうか。


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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年8月31日