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» 2012年07月23日 10時00分 公開

麻倉怜士の三番勝負:レーザーが液晶テレビの“色”を変えた? 鮮やかなシアターテレビ“REAL LASERVUE”の実力を麻倉怜士が探る (3/5)

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麻倉氏: では、改めて、画質の専門家である安井さんに伺います。「CEATEC JAPAN 2011」の展示は赤がすごかったですね。あの時は技術アピールのために赤を強調していたことは分かっていましたが、5月頃に試作機を見たら、まだかなり赤にこだわっていて「商品にならないのではないか?」と指摘した記憶があります。でも、後で見たら、今度はおとなしくなりすぎていました。

三菱電機先端技術総合研究所・映像システム技術部システムプラットホーム技術グループ主席研究員の安井裕信氏

安井氏: やはり最初は赤が出るので、私もうれしくなってしまいまして(笑)。液晶テレビの赤は、だいたい「朱色」なんですね。「赤は出ないの?」とずっと言われてきたのですが、レーザーにすると、それこそ出過ぎるほど出ますから、逆に赤を押し込めることに苦労しました。まるで“暴れ馬”の調教です。

 赤を出し過ぎると色が飽和したように見えてしまいますし、人の目は赤に対する感受性が高いので、赤だけ“前に出ている”ように感じたりします。そこで赤を押し込めるように調整すると、今度は普通の液晶テレビと同じになってしまい、何が良いのか分からなくなります。それを行ったり来たりしていました。

 5月の時は、Blu-ray Discの映画を見て、「ヒロインよりも背景の赤い絨毯とカーテンのほうが目立っているよ」と言われてしまいました。これではいけないと思い、アドバイスに従って「映画モード」は普通に赤を押し込めてみようと。すると押し込むことができたので、逆にそこから少し出すことは比較的楽にできました。制限していたところを少し緩和すれば良いだけなので。少し赤が出て、でも赤が主張しない画作りにしています。

麻倉氏: そのさじ加減はとても重要ですね。

安井氏: レーザーは色域が広いので、色補正がないと(本来の色域の)外側に出てしまいます。赤も本来あるべき赤ではなく、レーザーの“100%赤”になってしまうので、逆に「普通の赤」にすることが重要です。もう1つは肌色の見せ方ですね。テレビは肌色が重要ですから、それが赤っぽくなると酔っ払いのように見えてしまいます。このため、とにかく肌色を合わせ、赤は内側に押し込めておいて、かつレーザーの赤、つまりピュアな赤が出てくる部分は色域の外に出すという処理を行っています。ここが最も苦労した部分です。

 三菱は独自の色補正回路「ナチュラルカラーマトリクス」を持っていますが、実はこれがかなり優秀です。通常の色補正では、6軸程度しか調整できませんが、ナチュラルカラーマトリクスは6軸(R/G/B/Y/M/C)に中間色を加えた12軸の個別調整が可能です。さらに色の濃さ(彩度)や色の明るさの違いで、それぞれのパラメータを持っているため、合計24軸にもなります。それを、すべていじらなければなりません。また先に述べた12軸に対して軸の追加や移動もできるので、R(レッド)とY(イエロー)の間に2軸を追加して、肌色と赤はより細かな調整ができるようにしました。

色の違いをじっと見定める麻倉氏。色再現範囲。赤いラインがREAL LASERVUE、内側の白いラインが従来の白色LEDテレビだ

麻倉氏: これは音作りにも似ていますね。優秀なツールを使いながらも、最後は作る人の感性が物をいう、まさに職人芸。昔の三管式プロジェクターの色調整も思い出しました。

杉浦氏: この化粧品の映像を見ると分かりますが、従来のテレビでは微妙な色の違いは表現できず、左の2本は同じ色にみえてしまいます。しかしレーザーには色の帯域に余裕があるので、ただ鮮やかにするだけではなく、微妙な色の違いがよみがえるのです。

麻倉氏: クリエイターは色の違いもメッセージとして視聴者に送っていたわけですが、従来の液晶テレビでは伝わっていなかったわけですね。しかし、デジタル放送の色域は、国際規格の「ITU-R BT.709」で規定されています。放送を見るぶんには、従来の色域と変わらなくなってしまうのではないですか?

杉浦氏: BT.709になる、つまり元の映像が狭い色域に押し込まれる過程を考慮し、色補正のときに「元の色はどうだったのか?」と推定することで、放送時に押し込められてしまった部分を広げて再現できます。

麻倉氏: 今日、製品を見て色調整もいいところに着地しそうだと思いました。推定も職人芸なのでしょうね。色調整で最も苦労したのは、そのあたりでしょうか?

安井氏: 色にはやはり、人の主観といいますか、好みがありますので、そこは難しかったですね。テレビは、どちらかというと正しい色を表示することよりも、人の“記憶色”に近い調整をしなければなりません。確かに正しい色を出すこともできますが、それはモニターの世界。例えばsRGBを正しく表示できるテレビがあったとして、多くの人は「色が薄い」と感じるはずです。

麻倉氏: 大多数の人が良いと思うレベルに調整したということですね。

安井氏: そうです。手探り状態で調整していると、どんどんおとなしくなってしまいますが、製品の特長を出すためには“とんがりたい”。店頭で他社製品との差別化も必要ですし、どこに目標を定めるかが一番難しかったですね。



 やはり赤の再現性という点で従来にない「新しい体験」ができるようになったことは大きいです。とにかくアナログ放送の時代から、テレビでは正しい赤の体験ができません。画質を考えると、まず解像度重視で、次がコントラストです。色の項目はなかなか出てきません。しかし、人間が一番感動するのは色であって、コントラストはその次ではないかと私は思いますね。

 色は放送フォーマットで完全に決まっているために、いじることは難しいのですが、伝送時に圧縮されてしまった色をうまく元に戻すことができれば、それは“映像制作者の意図”を、より忠実にテレビが再現できることにつながりますね。心配だったのは、赤は非常に目立ちやすい色だということ。これまで出せなかったものが出せるようになると出したくなるのが技術者の欲求ですから、それがあまりに表に出てしまうと不自然な映像になってしまいます。

 インタビューにあったように、一度は行き過ぎ、さらにおとなしく調整しすぎて面白みがなくなってしまいましたが、やはり人は一度行き過ぎないと戻れないものです。24軸の色補正という色補正回路も優秀ですが、作っている人の感性がないとダメです。REAL LASERVUEの場合、とても印象的なのだけれど、決して不自然ではない赤ができました。正しいモニター色か、人間の記憶色か――という視点でいえば、REAL LASERVUEは「より鮮やかな記憶色」です。

 肌色も良いですね。肌色の調整は難しく、単に赤が入っていればいいわけではありません。まるで添加剤のようにさりげなく赤が入っていると、いい感じになります。それからシアンも特筆もので、REAL LASERVUEではちょっと見たことのないエメラルドグリーンを見ることができます。われわれが大画面でコンテンツを見るのは、今まで体験したことのないことを体験できるからでしょう。沖縄の海などを見ると、とても良いと思います。超絶画質で知られるビコムの“沖縄三部作”を見てみたいと思いました。

 そしてREAL LASERVUEには、もう1つ大きな特長があります。カーボンナノチューブという最先端素材を活用したスピーカーは、先に結論を言ってしまうと、すごく良い音です。今度は音についてチェックしていきましょう。


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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年8月31日