部分駆動の先駆の技が描く“本物”の光と影――4K対応BRAVIA「X9200B」がエッジ型LEDの常識を超える本田雅一 v.s. ソニー技術者(1/3 ページ)

画面の両サイドに大きなスピーカー。昨年、4Kテレビ市場を席巻した「X9200A」のコンセプトを継承しつつ、画質と音質をさらに磨いたソニー“BRAVIA”(ブラビア)の「X9200B」シリーズ。AV評論家・本田雅一氏が、その画作りのノウハウとテクニックに迫った。

» 2014年07月14日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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 一昨年秋、4Kパネルを採用した84V型の「KD-84X9000」を発表してからというもの、ソニーはテレビブランド“BRAVIA”(ブラビア)の商品構成をガラリと変えてきた。デザイン、画づくり、スピーカーの質などを含め、テレビを通じて感じられる“ユーザー体験”を最大限に高めるため、社内にあるさまざまな技術、ノウハウを集結させる。ドイツ・ベルリンで開催された家電ショー「IFA 2012」で84V型4K対応テレビの試作機を披露したソニーの平井一夫社長は、その固い決意を熱く語った。

「IFA 2012」で84V型4K対応テレビ(KD-84X9000)の試作機を披露したソニーの平井一夫社長

 もっとも、どんなに技術やノウハウがあろうと、より良い製品を作り続けるには“継続する意思と力”が必要だ。毎回、全力投球で社内にあるノウハウを注入し続け、消費者の声に耳を傾けながら改良を続けてこそ、本当に価値のある製品が生まれてくる。

 それは、ほとんどのテレビがフルHD対応になって以降、失われていた方向性だった。もちろん、毎日使う、観るテレビだからこそ、操作性や機能性も重要だ。また、同じような機能ならば、価格面で購入しやすい方が良いに決まっている。しかし、機能と価格ばかりに目が行きがちになり、本当の付加価値とは何なのか? を追求する方向性がテレビという商品から失われつつあった点は否めない。

 さて、ではBRAVIAはどうだったのか。4K対応テレビ参入から2年近くの時間が経過したが、その間、“高付加価値のテレビとは何か”を追求する手を弛めなかったことを、まずは評価したい。昨今のBRAVIAシリーズで、まず驚かされたのは昨年の「X9200Aシリーズ」におけるスピーカーだった。84V型の特別な製品で大型の高音質スピーカーを搭載する。これは誰もが期待することであり、そうあって当然という気持ちもある。しかし65V型以下のテレビで、あえて横幅を大きく(すなわち設置に必要なスペースが大きくなる)してまで、高音質スピーカーを配置したことは、ソニーの決意を感じさせるに充分な商品企画だったと思う。

昨年の「X9200Aシリーズ」のコンセプトを継承した「X9200Bシリーズ」。写真は55V型の「KD-55X9200B」。店頭では42万円前後で販売されている

 一部にはサイズの大きさや特徴的なデザインに否定的な意見もあったようだが、ふたを開けてみると“だからこそ”と「X9200A」を選ぶ消費者は多かった。とりわけ日本においては、売り場で4K対応テレビを探す顧客が来ると、店員が「X9200A」のボリュームを上げて注意をひき、あまりの音質の違いに価格差をものともせずに選ばれるケースが多かったという。実際に昨年の国内の4K対応テレビ市場においては、「KD-55X9200A」がナンバー1ヒットモデルとなった。

 そして、ソニーは新製品「X9200B」シリーズでさらなる高音質を実現した。今度は家庭向けの音楽スピーカーとしても充分ではないかというほどの改良が加えられ、アンプ回路の検討はもちろん、別基板とすることでオーディオ的な音質を獲得したのである。

ツィーター(写真=左)と中高域を担当する磁性流体スピーカー(写真=右)。磁性流体サスペンションでダンパーレス構造とし、ひずみの原因となる2次音圧が発生せず、伸びのある中高域を実現している。「X9200B」では、振動板の素材をグラスファイバーに変更してさらなる音質向上を図った

エッジ式なのに巧みなローカルディミング

 4K対応BRAVIAが本物志向であることは、今年のラインアップ全体を見渡しても分かる。それは機能面でいえば「X9500B」シリーズで直下型LEDバックライト+細分割のローカルディミングを採用したり、消費電力を上げずに全体のバランスを考えながら、“輝き”が求められる部分だけを強く光らせる。そんな“機能面”からも読み取れる。

 しかし、本当の4K対応BRAVIAシリーズの良さは、実際に映像を楽しむシーンにおいて、“正しく”、“美しく”、“効果的に”映像を見せる巧みさにあると思う。例えば部分的にバックライトの明るさを調整することで、液晶パネルが持つダイナミックレンジを最大限に活かすローカルディミング。この部分だけをみてもBRAVIAの制御は他社と大きく違う。

 作品の印象を正確に伝えることが求められる映画用の画質モードは、映像の印象が大きく変わらないよう、各社ともローカルディミングを抑えめにしている。……というのはかなり控えめな書き方で、実際にはほとんど動いているように見えず、真っ暗なシーンでもバックライトが消えない(すなわち完全な黒にならない)。ところが、BRAVIAシリーズは映画用の画質モードを含め、より高い再現性が求められる場合でも、積極的にバックライトを動かす。真っ暗な信号の時には、完全にバックライトも消える。

 それでいて、「X9500B」のような細かな分割のローカルディミングでなく、上下エッジバックライトを採用する「X9200B」でも、不自然さのない、しかしダイナミックな光の演出を再現できる。例えば本編の大半を通じて、明るい地球と漆黒の闇が同じ画面に同居する映画Blu-ray Disc「ゼロ・グラビティ」。こうした映像でも、実に明暗のダイナミックレンジが広い現実感のある映像を再現しつつ、違和感を感じさせないのだ。

 こうした“巧みに光を操る”効果は、フルHDパネルでハイエンド製品が登場していた「HX920」「HX950」の時代にも感じていたが、果たしてそれはどういった技術に裏打ちされているのだろう。実際にBRAVIAのバックライト制御の動的制御部分を担当しているTV事業部のエンジニアリングマネジャー、勝義浩氏の話から、BRAVIAシリーズの高画質化に対する取り組みを探っていこう。

TV事業部 商品設計1部 設計技術2課 エンジニアリングマネジャーの勝義浩氏

 まずは「4K X-Reality PRO」について聞いた。“光を操る”ことには直接関係ないのだが、「4K X-Reality PRO」の超解像が昨年モデルよりも大幅に改善されている。名前は同じでも結果はまるで違う。今年モデルの方が輪郭が細く、自然な仕上がりで4Kらしい伸びやかで柔らかい映像を表現できているのだ。

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