部分駆動の先駆の技が描く“本物”の光と影――4K対応BRAVIA「X9200B」がエッジ型LEDの常識を超える本田雅一 v.s. ソニー技術者(2/3 ページ)

» 2014年07月14日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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自然なコントラスト表現につながる地道な工夫

「4K X-Reality PROは、データベース型超解像といって、映像の特徴を抽出し、抽出した特徴から適切な映像処理をデータベース(情報を蓄積し自由に引き出す機能)から引き出して適用するようになっています。そのデータベースの中身と、映像処理アルゴリズムが今年は変わっています。その結果、より4Kの特性を活かせるようになりました」(勝氏)。

映像処理アルゴリズムの変更ときいてうなずく本田氏

 なるほど、まったくその通りの印象だ。その背景としては、4Kカメラで撮影された映画が増えるなど、フルHDのBlu-ray Discであっても高画質化が進み、以前よりも多くの情報が映像の中に含まれるようになったことがある。こうした最新の映像トレンドを取り入れたことで、超解像の画質が高まったのだ。

 では、勝氏の本業である“光を使いこなす”部分はどうだろう。そこにはどんな差別化要因……ソニーだけのユニークさがあるのか。上下エッジLEDのような分割数が限られている場合でも効果的にローカルディミングを活用できている理由は何なのだろう?

「そこはもう、“どのように光らせるか”を試行錯誤で試していき、人間の目がどのように光を感じるか? について、ノウハウをためていくしかありません。例えば暗いシーンから明るいシーンに移行する際には、瞬間的に明るさを出せなければ映像表現がおかしくなってしまいます。しかし明るいシーンから暗いシーンにかけては、目立たないようゆっくりとバックライトを絞った方がいい。実際にはそう単純な話ではなく、それこそさまざまな場面を観ながら、シーンの特徴を抽出し、それぞれの場合に応じてバックライトの動きを調整しています」。

人間の目がどのように光を感じるかを考慮し、多くのシーンの特徴を抽出して制御させるという

 単純に対象となるエリアの明るさだけで決めるのではなく、隣合うエリアとの輝度差を考慮しながら調整を行う。時間軸の輝度差も考慮して、あらゆるパターンの制御を行う。ここがBRAVIAが他のテレビと大きく異なる部分だろう。改めてこの点を勝氏にぶつけると、「他社製品との違いは、バックライト制御を行うための条件抽出の部分でしょう。より良い効果が得られるよう、必要な情報を説明した上で、映像エンジンのLSIを設計してもらっています」と説明してくれた。「後はとにかく、より多くのシーンを観ることです。会社に行ったら、ずっと暗室にこもって、なるべく多くのシーンを観ます。そして、バックライトの動きが不自然だと感じたら、その原因を探って対処します」。こうした地道な努力の積み重ねが高画質へとつながっているわけだ。

 では、そこまでていねいに作り込んだバックライト制御。とりわけ違いが分かりやすいシーンをたずねてみた。「開発時には『ハリー・ポッター』シリーズの中で、ヴォルデモード卿がホグワーツ魔法魔術学校を襲うシーンを何度も繰り返しチェックしました。このシーンは、全体に暗いシーンで黒い衣裳を着た死喰い人たちが青白い顔を見せていますが、続いて魔法を全員で放ち、それが花火のように学校へ向かいます。ここで黒浮きを感じないぐらいバックライトを絞り、その上で適切な信号処理で青白い顔のゲインを持ち上げているのが分かると思います。さらに魔法が放たれると、それぞれが眩い光で飛んでいく。このときにも背景が浮き上がるようにして、コントラストが下がる印象を与えないようにしました」。

 このシーン、実は他社も開発に活用している場面だが、ローカルディミングが効き過ぎて、死喰い人の顔まで暗く沈んでしまうことが多い。バックライトを沈めた分、明るさを持ち上げる処理をしなければ暗く沈むことになるのは当たり前だ。このように“当たり前のこと”を当たり前に感じられるように作り込んできた結果が、“BRAVIAならではのローカルディミング”を生み出している。

「バックライトを絞ったら、映像は逆補正をかけて同じ明るさにしなければならないのは当然ですが、バックライトの明るさ調整と信号制御のタイミングをきちんと同期させるには技術的な難しさがあるんです。少しでもそれがうまくいかないと、“エラー(おかしな映像にみえること)”が起きてしまいます。“エラーが起きないように控えめに動かす”という選択肢もありますが、われわれは積極的に動かして、かつ“エラー”が起きないような開発を進めてきました」。

 言い替えれば、積極的に動かすことを何年も続けてきたからこそ、ノウハウもたまり、より良いバックライト制御へと追い込んでくることができたともいえる。この取材中、視聴しながら気付いたのだが、バックライトの絞り込みを積極的に行うことで、暗部の再現性が高まっていることにも気付いた。液晶には最暗部の再現能力が低いという弱点がある。しかし、積極的にローカルディミングを行い、ゲイン調整でパネルのダイナミックレンジを最大限に使うことで、“液晶の悪い部分”を極力使わずに済んでいる。BRAVIAの的確な映画画質には、そうした背景もあるのだろう。

「X-tended Dynamic Range」が描く鮮烈な光

 さて、光の制御という意味では、白側のダイナミックレンジを拡大する「X-tended Dynamic Range」も興味深い。例えば映画モード(シーンセレクト:シネマ)は一般的にバックライト輝度を絞り、暗めの部屋で映画を映画らしく楽しめるよう作ってある。これはバックライトを積極的に明るく制御(つまりローカルディミングの逆制御だ)することで、白をより白らしく、輝きをより輝かしく表現できる可能性を示している。これがX-tended Dynamic Rangeの目的だ。

 カメラで撮影、あるいはフィルムをリリース版にプリントする際、白側のダイナミックレンジは圧縮して収められる。しかし、液晶パネルに輝度表現の余裕があるのなら、それを回復することが可能だ。BRAVIAはそれをローカルディミングと同様に、エリアごとにコントロールするのだ。

コントラストを上げるだけでなく、眩しさをも演出できる「X-tended Dynamic Range」

「例えば『ゼロ・グラビティ』の中でも真っ暗闇の中の星空といった表現では、直下型のX9500Bでなければ表現しきれないシーンもあります。しかし、例えば地球が一部に入り込んでいたり、宇宙ステーションや宇宙服が白く浮かび上がっているようなシーン。こうした部分では、バックライト輝度の余剰分を活用して、輝き感、眩しさを演出できていると思います。どこでも明るい部分を眩しく見せるのではなく、絵作りの中で白つぶれが許容されているであろうエリアを解析して処理しているので、省電力性もあまり失われませんし、視覚的にも効果が大きく見えると思います」。

 ところで、勝氏が取り組んできた高画質化の取り組みを、店頭で確認することはできるだろうか。多くの場合、店頭は自宅環境よりも照明が明るく、流れているコンテンツもメーカーごとに違う場合が多いので、液晶テレビの本当の実力を比べることは難しい。実際には大きな差があるのに、その差に気づきにくいのだ。勝氏は、「『ハリー・ポッター』にしろ、『ゼロ・グラビティ』にしろ、明るい部分と暗い部分が共存するシーンがあり、こうしたシーンであれば、店頭のような環境でも比較的“差”が分かりやすいでしょう。コントラスト感がしっかりと出ていると思います」と語る。


「そしてもう1つ。これは多数あるBRAVIAが持つ映像処理技術の1つなのですが、顔検出機能を4K X-Reality PROは備えています。顔の凹凸やコントラスト感(影がつきすぎてキツくならないようにするなど)について、細心の注意を払っています。顔であることを検出して処理を行っているので、肌色の色味に関しても自然な赤みを狙って色処理しています」。

 この顔検出はすべての映像モードで働く。特にきちんと撮影用のライティングが行われていないスポーツイベントの観客席などでは明らかに差が出るのだ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2014年8月13日