従来機に比べて最大75%もの静音化に成功した「AM09」。しかし、ファンヒーターは構造が複雑で、内部にスペースの余裕はない。そこでダイソンのエンジニア達が実行した静音化のアプローチとは?
“羽根のない扇風機”として注目を集めた「AM01」の登場から5年。独自の特許技術「Air Multiplier™(エアマルチプライアー)テクノロジー」を採用したダイソンの空調製品は2014年に大きな進化を果たした。4月に発売した扇風機「AM06/07」に続き、10月に登場したファンヒーターの「AM09」も従来機に比べて最大75%もの静音化に成功したのだ。
ファンヒーターである「AM09」は、扇風機よりも構造が複雑だ。ループ部は左右にセラミックヒーターが組み込まれ、部屋を暖めるときの消費電力は最大1200ワット。このヒーターを駆動するためには追加電源基板が必要で、扇風機に比べるとスペースの余裕がない。さらにAM09では、温風を集中して届ける「フォーカスモード」と、広範囲に温風を吹き出す「ワイドモード」を切替可能な「ジェットフォーカステクノロジー」を新たに搭載しているため、本体の上部にも部品が詰め込まれている。
もちろん本体のサイズを大きくすれば空間的な余裕は生まれるが、それではファンヒーターとしての使い勝手が悪くなってしまう。幅約20センチ、高さ60センチ弱というサイズを維持したまま、しかも“中身が詰まった状態”で騒音を低減させるのは、エンジニアリング上の大きなチャレンジだった。
ダイソンには、アコースティックエンジニアと呼ばれる音響専門の技術者たちがいる。人数は10〜20人ほどで、空調製品をはじめ、掃除機や加湿器など全製品のノイズ低減のほか、どの音域(周波数)が人にとって不快な音になるのかといった音質面の研究も行っている。彼らは主に英国の開発拠点で活動しているが、生産拠点であるマレーシアにも数人が常駐し、製造ラインから出てきた実際の製品を検証する役割を担う。
エンジニア達は、まずノイズの発生源を探し出す。「AM09」の場合、主にモーターの駆動音と空気の流路(通り道)で発生する乱気流の摩擦音が原因だった。「AM09」は、モーターが「ミックスフローインペラー」と呼ばれる羽根を回して空気を取り込む仕組みだが、これらが早く回転すればするほどノイズは増えてしまう。また流路に空気の流れを遮るものがあると、ノイズの発生に加えて電力も余計に消費する。エンジニア達は、最初に空気の通り道を最初から見直すことにした。
空気は本体側面から取り込まれ、ミックスフローインペラーを通って上部のループ部分に送り込まれる。そこで新たに設けられたのが「インペラーインレットガイド」だ。ミックスフローインペラーの下端にある黒い部分を見ると、従来機にあたる「AM05」では上に折り返しているのに対し、「AM09」ではトランペットのように外側に広がっていることが分かるだろう。一見、「AM05」のほう空気の流れを阻害しないような印象を受けるが、実はそうではなかった。エンジニア達は実験と検証を繰り返し、この形に辿り着いたのだ。
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提供:ダイソン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月31日