「B-CAS廃止」――その動向:デジモノ家電を読み解くキーワード
デジタルテレビ視聴に欠かせない「B-CASカード」。意識せずに使っている人も多いと思われるが、問題点の多さも指摘されている。見直しが確実視されているB-CASカードの最新動向をお伝えする。
「B-CAS」に指摘される問題点
地デジなど保護された放送を受信視聴するときに必要な「B-CASカード」。カードの発行・運用にあたる団体は「株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ」という民間企業。以前に本連載で書いたよう非上場の株式会社であり、株式の譲受を制限する法律・法令は存在しない(→デジモノ家電を読み解くキーワード:「B-CASカード」――その存在理由と問題点)。
事実上「日本のデジタル放送を独占する」位置にありながら、その独占に関する法的根拠はない。最近まで財務内容のみならず本社住所すら明らかにされていなかったことをあわせると、国民から疑問の声があがるのは当然だ。
B-CAS見直しの動き
B-CAS見直しを求める世論の高まりを受け、総務省の諮問機関である情報通信審議会は「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(通称:デジコン委員会)」において、地デジにおけるB-CAS見直しの方針を固めた。詳しくは、6月に提出された第5次中間答申(参考資料:)を参照していただきたい。
この議題は現在審議中で、地デジにおけるB-CAS廃止が正式に決定されたわけではない。現在は委員会内に設けられた作業部会が検討を進めており、10月14日に開催された第45回デジコン委員会では、「カードの取り扱いに関するストレス」と「コストと効果」、「スクランブル技術との関係」がB-CASの課題として挙げられている(B-CAS見直し議論、具体化へ)。
どうなる、B-CAS?
デジコン委員会における正式な結論は出ていないが、現行の「B-CAS体制」にメスが入ることは間違いない。特にカード方式による著作権保護機構は、B-CAS破りで話題を呼んだデジタルチューナー「Friio」が流通していることもあり、見直しは確実な情勢だ。カード方式以外の候補には、専用ICをチューナーに組み込む「チップ方式」、オンボードのプログラムで対応する「ソフトウェア方式」が挙げられている。
そのB-CASカードをシステムとして使用するダビング10に関しても、“対価の還元”についての検討は継続されている。こちらについては、著作権者団体・消費者団体双方から、立場を異にした意見が出るはずで、今後の調整が注目される。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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