パナソニック「DMR-BW950」で見るBD「ガンジー」のレストア高画質:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.35(2/2 ページ)
パナソニック「DMR-BW950」は、早くもラインアップを一新したDIGAシリーズのトップエンドモデル。ワンセグ録画やYouTubeといった新機能に注目が集まりがちだが、画質面でも着実に進化していることが分かった。
さて、画質・音質については回路面でDMR-BW930を踏襲しており、システムLSI「Uniphier」(ユニフィエ)によって集中制御され、高精度な画像圧縮を約束するMPEG4 AVCエンコーダーや高品位な色輪郭のキレを実現する新リアルクロマプロセッサーなど、基本技術はそのまま。しかし、実際にその画質を細かくチェックしてみると、DMR-BW930から着実な進化がうかがえる。
MPEG4 AVCエンコーダーによる長時間録画モードでは、圧縮ノイズの細かさやダイナミック・コントラストの伸びのよさで明らかにDMR-BW930に勝るし、再エンコードせずにダイレクト・ストリーム記録するDRモードでも、DMR-BW930よりも階調表現の稠密さで上回っているような印象を受ける。基本回路に大きな違いはなくとも、電源のグラウンド周りの処理など、きめ細かなつくり込みが結果的に画質に反映されたのではないかと思う。
BD ROMの再生でも、高級BDプレーヤーに肉薄し、ある部分はしのいでいるのではと思えるほどのビジュアル・パフォーマンスを見せる。色輪郭のキレのよさによって得られる鮮鋭感の高さ、ノイズ粒子を磨き込んだS/N感の高さ、グラデーションの滑らかさ(とくに暗部)などが実に秀逸なのだ。
そんなDMR-BW950で見て、その画質の素晴らしさに感嘆の声をあげてしまったのが、BD ROM「ガンジー」(1982年)である。
英国映画界の巨匠、リチャード・アッテンボローが演出を手がけた本作は、ベン・キングズレーがインド独立の父・ガンジーを見事に演じきったことで映画ファンの記憶に長く残っている作品である。
撮影当時、キングズレーは四十歳手前だったはずだが、年老いた晩年のガンジーを演じた後半など、彼が徳の高いほんとうの半裸の行者、老人に見える。ガンジーがのりうつったとしか思えない、キングズレーの入魂の演技がBDの高画質でひときわ冴える印象だ。
そう、この映画BDは今から四半世紀以上前の作品だが、画質がたいへん素晴らしい。フィルムのレストレーション(修復)がじつに丁寧で、フィルムグレイン(粒子)を残しながら目障りなノイズを目立たせない、誠実なオーサリングが施されている。
とりわけすごいのが、冒頭のガンジーの葬儀場面。見物人を含めて30万人以上のエキストラが動員されたそうだが、自室の110インチ・スクリーンで見てその大群衆のリアルな手応え、圧倒的迫力に息をのんだ。またこれはDMR-BW950のキレよく、ハイライトの伸びた画質がよく映えるシーン。インドの陽光、熱く甘い空気がスクリーンから漂ってくるかのようなイリュージョンが味わえる。
また、DMR-BW950は階調描写がじつに精妙。インドを支配する英国人総督の部屋のゴージャスな家具調度のリアルさ、南アフリカで列車の一等客室から放り出された若き日のガンジーが寂しげな駅で途方に暮れるシーンの夜の闇の深さの表現など、まさに高級BDプレーヤーに肉薄する魅力がある。
高級BDプレーヤーに本機が明らかに負けているのは、HDMI/アナログ両出力の音質である。とくに大きく違うのはダイナミックレンジの表現力。ここには再生機能に特化して音を磨き込んだBDプレーヤーとは(当たり前のことだが)大きな差があると思った。
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