日立「P50-XP03」が描く「チェンジリング」の深い闇と希望:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」VOL.36(2/2 ページ)
日立製作所“Wooo”新製品の頑張りがずいぶん話題になっている。以前の日立プラズマというと、黒浮きが気になって映画を観るにはイマひとつという感じだったが、今回の03シリーズの黒、コントラスト表現はじつに素晴らしい。
AVネットワーク対応についても今回のWoooは先進的だ。03シリーズのテレビをルータにLAN接続しておけば、そのルーターにつながれたすべてのDLNA対応テレビやPCで、03シリーズで録画したコンテンツを共有できる。もちろん逆に、例えば書斎のPCなどに保存している写真や動画をリビングルームの03シリーズで観ることも可能だ。
高画質テレビの提案として見逃せないのが、新たに加わった「インテリジェント・オート高画質」機能。これは、部屋の照度環境とコンテンツの特性に合わせて、オートマティックに日立が考える高画質に最適化してくれる映像モード提案である。
具体的には、テレビ本体に取り付けられた照度センサーによってその部屋の照度と照明の種類(昼光色か電球色か)を検知、映像信号の輝度レベルと番組のジャンル情報をモニターし、日立オリジナルのアルゴリズムに従ってその入力データを解析、自動的に最適画質をリプロデュースするというものである。実際には、照度環境とコンテンツの性格に応じて、コントラスト、黒レベル、色温度、階調、彩度、鮮鋭感などが制御されるが、視聴者に違和感を抱かせないように、ちょっとした変化で画質が目まぐるしく変わらないような設定がされている。
また、昨年のモデルから引き続き本シリーズにも「なめらかシネマ」機能が採用されている。これはフィルムジャダーと呼ばれる映画ソフト特有のカタカタした動きをなめらかにつないで見せる信号処理法。元信号が毎秒24コマで収録された映画ソースが入力された際、通常は奇数画像を2回、偶数画像を3回繰り返し毎秒60フレームの映像として表示するが(2-3プルダウン)、「なめらかシネマ」では、元信号のコマの間に3フレーム分の補間画像を新たに生成して挟み込んでなめらかにつなぎ、フィルムジャダーを目立たなくするのである。
今回新たに採用された「インテリジェント・オート高画質」では、60i/p入力信号については「なめらかシネマ」で表示し、映画のBD ROMなどの1080/24p入力信号については、フィルム・テイストを尊重し、補間映像をいっさい挟み込まずに24コマ/秒の画像を4等倍して96コマ/秒に変換する「シネマスキャン」モードで表示するという使い分けが行なわれている。このへんの考え方もじつに周到だと思う。
昨年モデルの「なめらかシネマ」は、動きの速いシーンで補間ミスによってノイズが目立つこともあったが、本シリーズでは、動き予測精度が上がったのだろう、補間精度が上がり、目に見えてノイズが減った印象だ。ライブ音楽映画BD ROMなどでは、「シネマスキャン」モードで観るよりも「なめらかシネマ」で観るほうが面白いと思えるほど。クロースアップされるシンガーやソロイストが画面から浮き出てくるようなイリュージョンが味わえ、ライブの臨場感がより高まるからである。
7月17日に発売されるクリント・イーストウッド監督の「チェンジリング」のBDを本機の「シネマスキャン」モードで観たが、この映像がことのほか素晴らしかった。
舞台は1920年代後半のロスアンジェルス。シングルマザーのクリスティン・ロリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の留守中、9歳の一人息子ウォルターが突然姿を消す。必死で息子を探しまくるクリスティンに、5カ月後、警察からウォルターが見つかったという知らせが。しかし、実際に姿を見せた子どもはまったくの別人だった。それ以降、間違いを認めないLA警察にクリスティンは敢然と立ち向かい、自分の子どもを見つけるために孤軍奮闘するのだが、彼女を待っていたのは思ってもいなかった衝撃の結末……。ここで描かれるLA警察の専横ぶりに驚かされるが、なんとこれは実話を元に映画化した作品だという。
アカデミー主演女優賞にノミネートされた、子どもを探し続ける母親役のアンジェリーナ・ジョリーの演技が断然素晴らしく、P50-XP03は、安定したスキントーンで彼女の絶望、焦燥、憤怒の表情を見事に描き分ける。P50-XP03が表現する「ついに見つけたわ。希望という名の生きる糧を」とつぶやくラスト・シーンの彼女の神々しいまでの美しさに強く心を打たれた。P50-XP03の、人々がいつもきちんとした恰好をしていた1920年代のニート・ファッションの描写力も特筆に値する。これぞHD映像の醍醐味だという思いがした。
P50-XP03でBD「チェンジリング」を観て、50V型超の大画面はやはりプラズマだ、と改めて確信した。
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