映画ファンのための低価格BDプレーヤー選び(2):本田雅一のTV Style
今回は、先週取り上げた低価格BDプレーヤーの中でオススメといえるパイオニア「BDP-320」およびパナソニック「DMP-BD60」を詳しく紹介していこう。
先週は、低価格BDプレーヤーとしてパイオニア「BDP-320」とパナソニック「DMP-BD60」がオススメというところまで書いた。実は近くもう1台、有力な低価格プレーヤーが発売されるが、それはまた来週ということで、前記の2機種について話を進めよう。
BDP-320は、パイオニアの中でも高級機と位置付けられるモデルに付けられる”LX”の名が与えられていない。しかし、その基本部分は上位モデルの「BDP-LX52」と同じだ。違いは大ざっぱにいえば、同社製AVセンター「VSA-LX52」と接続時に利用できる「PQLSマルチサラウンド」の有無ぐらいのもの(HDMI端子経由のCD音質を高めるPQLS 2ch オーディオにはBDP-320も対応している)。一方で画質に関して、両者はほぼ同等と考えていい。
さらに細かく見ていくと、インシュレーターや音質面での追い込み作業はBDP-LX52で行われているので、その点でも両者には差がある。このため、PQLSマルチサラウンドを利用しない場合でも、若干、BDP-LX52の方が音質面で有利とはいっておきたい。とはいえ、BDP-320の価格を考えれば充分。何しろHDMI出力の画質はほとんど同じだ。
BDP-320の画質は、基本的にLSIを含む開発プラットフォームが変わっていないため、「BDP-LX91/LX71」以降に発売されたパイオニア製BDプレーヤーと共通のキャラクターを持っている。派手さや深彫りの描写という印象はないが、滑らかな階調感はソフトで、デジタルディスプレイが本質的に持つ固さをほぐしてくれり、癒し系の絵だ。
映像の情報を根掘り葉掘りほじくり出して見せるというのではなく、階調の滑らかさと丁寧なトーンカーブによる見せ方にホッとさせる優しさがあるのが、このところのパイオニア製BDプレーヤーの特徴がある。接続するテレビ(ディスプレイ)のタイプごとに、質感を微調整した「ビデオアジャストモード」も、もちろん搭載。BDP-LX52と全く同じプリセットが入っているのだ。
とくに「Pioneer PDP」を選択すると、HDMI CECを用いてパイオニアのテレビ/ディスプレイと通信。機種を認識した上で、パイオニア第9世代PDP(最終型のKURO)と同等の絵作りになるよう調整される。もちろん、黒浮きなどコントラストの広さまでは真似られないが、パッと見の印象はほぼ同じになるから面白い。
いずれもディスプレイのタイプごとに、微妙に異なる絵を目指しているようで、例えば「Projector」ならばソフトな画調(ボケているという意味ではなく輪郭強調を抑えているという意味だ)で、暗部の階調が見通しよく、しかし浮いて見えないよう微妙なチューニング。ハイライトにかけてのトーンも穏やかだ。
一方、DMP-BD60は、とても小型・軽量。デザイン面だけでいえば、BDP-320よりも明らかに価格レンジが下に見えるのだが、しかし絵の情報量はタップリ。すでに評価を確定している「ブルーレイDIGA」で培ったPHLリファレンスクロマアップサンプリングが組み込まれているためだ。高精度の色信号処理(DVDやBD、放送には色信号が画素数分だけそろっていないため、プレーヤー側で補完しなければならない。その補完精度で画質が変化する)により、全体に引き締まってコントラストが高く見え、テクスチャーも深彫りの映像が導き出される。
市販BDソフト、録画BDコンテンツ、あるいはDLNA経由で受信した放送コンテンツなどから、ぎりぎりまで情報量を絞り出すのが、パナソニック製BDプレーヤーの良さだ。丁寧にトーンカーブを作ってキレイに見せるのではなく、可能な限り原本に忠実にというアプローチである。パイオニアのBDプレーヤーとは、ちょうど正反対の絵作りともいえるだろう。
音質に関しても「DMR-BW950」相当のHDMI音声を良くするための工夫が組み込まれているので、そう悪くはないのだが、低価格品だけに振動対策は不十分で、やや“ゆがみっぽさ”は感じる。もっとも、BDドライブが回転していない場合はドライブからの振動が発生しない上、電源ノイズの面でも有利なため、とても音質が良くなる。DLNAサーバからの番組をイーサネットから受信再生させると、デジタル放送のAAC音声とは思えないほど鮮度感の高い音が出てくるのだ。ユーザーになったなら、是非、一度はDLNA再生機能を試してほしい。
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