「REGZAブルーレイ」登場、“RD復活”はエアチェック界の大事件:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/2 ページ)
編集機能が充実したレコーダーの代名詞ともいえる東芝の“RD”シリーズが、Blu-ray Discドライブを搭載した「REGZAブルーレイ」として復活した。ファン待望の新製品は、AV評論家・麻倉怜士氏の目にどう映ったのか。試聴インプレッションを交えて詳しく解説してもらおう。
画質と音質の評価は?
麻倉氏: RD-X10でもっとも注目したいのは、その画質と音質です。最近は「CELL REGZA」の音を担当したことで注目を集めていた桑原さん(東芝デジタルメディアエンジニアリングの桑原光孝氏)も、RD-X10では本来の仕事で力を発揮しましたね。
東芝は、DVD時代に“究極”を狙ったハイエンドのプレーヤーを出して、ある時期から音と画がすごく良くなりました。そのアプローチは、良いデバイスを使い、電源をおごり、回路のS/Nを上げるという、とても正当的なやり方でした。最近では、「CELL REGZA」の内蔵アンプをマルチ構成にしたり、RD-X10でも7.1チャンネルのアナログ音声出力を備えたり、HDMI出力をセパレート化したりとこだわった設計になっています。いわゆる“桑原メソッド”ですが、ここまでのこだわりが詰まった製品はなかなかありません。
――実際に試聴してみて、どのように感じましたか?
麻倉氏: とてもバランスの良い画質です。コントラストがしっかりと出て、どこか輪郭を強調したり、黒を無理に沈み込ませるといったことはなく、すっきりとしたヌケの良い画が楽しめました。輝度やコントラスト、解像感などの均整がとれ、コンテンツの素性を素直に表現する力があります。とかく新ジャンルへの参入となると、どこかを強調して“すごいぞ”と自己主張してしまう製品が多いものですが、RD-X10にそうしたあざとい部分は見あたりません。
今回、試作機をわが家の視聴室に持ち込んでじっくりと見ることができたのですが、残念だったのは、手持ちのプロジェクター(QUALIA 004)が1080i入力までしか対応しておらず、本命の24P映像を体験できなかったことです。それでも150インチのスクリーンに映し出したときは、風格のある大人の画質だと感じました。
音に関しても細かい部分の情報量が豊富で、コンテンツの質感やニュアンスを感じることができました。それも単に音数が多いだけではなく、ボーカルの切れ味もいい。例えば、ホリー・コールの「I can see clearly now」は、しっかりした輪郭を持つ明確な音でした。これは桑原さんの好みだと思いますね。CELL REGZAのスピーカーを聴いても分かりますが、情報量が多くてワイドレンジ。まさに正道の音作りです。アナログ出力も試しましたが、D/Aコンバーターに良いデバイスをおごったこともあり、明確ですっきりとした音に仕上がっていました。
――RD-X10の評価は高いようですね。逆に東芝のBD製品に対する注文はありますか?
麻倉氏: 今後の“RD”(REGZAブルーレイ)には編集機としての資質をのばしてほしい一方、画質/音質へのこだわりを生かした単体プレーヤーの開発を期待したいです。かつての「SD-9200」や「SD-9500」といった名機の系譜を受け継ぐハイエンドのBDプレーヤーです。もちろん、それを期待するだけの再生能力をRD-X10は潜在的に持っているからこその注文です。
おまけコーナー:RD豆知識2
「REGZAブルーレイ」は、その名称通り、同社の液晶テレビ「REGZA」との親和性が高い。DLNAとDTCP-IPを活用した「REGZAリンクダビング」により、REGZAで録画した番組をLAN経由で無劣化ダビングし、BDに書き出すことができる。REGZAの対応機種は「ZH500」「ZV500」シリーズ以降となる。
なお、「CELL REGZA」とRDシリーズの組み合わせに限り、移動しながら直接BDに書き込める。さらにCELL REGZAの「55X2」「55XE2」「46XE2」とHDMI接続した場合、REGZAで録画した番組をHDMIケーブル1本でRD-X10にダビングできるというユニークな機能も備えた。これは、HDMI 1.4に含まれるHEC(HDMI Ethernet Channel)を利用してLAN接続と同じことを行っているためだ。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーとパナソニックのBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNの CD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書、2009年)――初心者以上マニア未満のAVファンへ贈る、実用的なホームシアター指南書。
「究極のテレビを創れ!」(技術評論社、2009年)――高画質への闘いを挑んだ技術者を追った「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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