「小手先のテクニックは必要ない」 米Shureの開発者に聞いた「SRH1840」(2/2 ページ)
SHUREの「SRH1840」は、同社が初めて投入する開放型(オープンバック)型ヘッドフォンであり、新しいフラグシップでもある。製品発表のために来日した米Shure Incorporatedの開発担当者に詳しい話を聞いた。
同じことはデザイン(外観)にもいえる。デュアルフレーム構造や6061-T6アルミ合金製のヨークは高い耐久性や機能美を感じさせるが、スタイルやカラーリング自体はオーソドックスかつシンプル。自己主張は控えめだ。「例えば『SM58』というマイクは音楽制作の現場で長らく使われているが、これを例えばiPhoneのようにグロッシー(光沢)な黒にしても音質は変わらない。スタジオで使い続ければ、きっと塗装は10年ももたないだろう。シュアはクオリティーをデザインするのであり、小手先のテクニックは必要ない」(Johns氏)。
こうしたプロユース前提の実用本位なデザインや音は、オーディオファンを中心とするコンシューマーに受け入れられる重要な要素だ。ただ1つ気になるのは、インピーダンスが65オーム、音圧感度は96dB/mWというスペックにより、使用時にはヘッドフォンアンプが必須になるという点。ハードルを高く設定することで、市場を狭くしてしまうとは考えなかったのだろうか?
Engstrom氏は、「日本ではコンシューマーの市場も大きいが、世界中が同じかと言えばそうではない。しかし、プロフェッショナルのエンジニアがほしいものを作れば、少なくともマーケットの規模は確保できる」と話す。「コンシューマー用とうたった製品をプロが購入することはない。しかし、『これはプロ用』とうたったものなら、プロはもちろん、コンシューマーも手に取ってくれる。もちろん、われわれはプライドを持ってプロの方々も満足できるものに仕上げた」。
ちなみに、SRH1840を駆動するヘッドフォンアンプについては、「最適なアンプを探し、見つけることも楽しみの1つと考えてほしい」と、いかにもオーディオファン視点の答が帰ってきた。「SRH1840は、最大1ワットの入力を許容できるため、大抵のヘッドフォンアンプは問題なく試すことができる。インピーダンスをマッチさせるなど基本も重要だが、実際にいろいろと試してほしい。ただ、ポータブプル用のヘッドフォンアンプはイヤフォン向きの製品が多いため、据え置き型のほうが望ましいかもしれない」(Engstrom氏)。
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