84V型だから見えるもの、ソニーの4Kテレビ「KD-84X9000」に感じた国産テレビの誇り:山本浩司の「アレを見るなら是非コレで!」(2/2 ページ)
ソニー「KD-84X9000」は、最先端の大画面高画質ディスプレイとしての魅力に満ちあふれた製品だ。「このご時世に168万円のテレビってありえないでしょ?」という声があるかもしれないが、その内容とクオリティーを精査すれば、けっして高くない。
「X Reality PRO」の力、3Dの迫力
2K(フルHD)から4Kへの変換回路は、最新ブラビアでお馴染みの「X Reality PRO」の4K版。4Kオリジナル映像波形とHDダウンコンバート映像波形を照合して超解像処理を図るという技術で、ここにはソニーが15年以上培ってきたデータベース型アルゴリズムが活用されている。その完成度は驚くほど高く、4Kネイティブ映像を横目で見ながら、HDにダウンコンバートした同一映像を4K変換した本機の画質をチェックしてみたが、大きな落差感を抱かせないレベルに仕上げられているのである。ソニーの超解像技術は今なお侮れないと改めて実感した。
室内照度環境をほぼ全暗にし、映像モードを「シネマ1」に設定して映画BDを観てみたが、コントラスト感にもほぼ不満を感じさせない。かなり粗いエリア分けのローカルディミングゆえに夜闇の中に電球が灯るシーンなどでは、電球の周りがボワッと明るくなるハロ現象が認められるが、かなりダイナミックな部分減光制御が行われていて、同社製フルHDテレビの傑作モデル「HX950シリーズ」(こちらは直下型LEDタイプ)同様、黒のつややかな表現に大きな満足感を覚えた。ハロさえ目をつぶれば本機のエッジライト・ローカルディミングけっこうイケるぞ、というのがぼくの実感だ。
それから何といっても感激したのが、本機が表現するBlu-ray 3D作品のすばらしさ。従来のブラビアのアクティブシャッター方式とは異なる偏光方式が採用されているが、これはBlu-ray 3Dを4K映像にアップスケールした後に、画面上の偏光シートで左右それぞれ4K×1K(3840×1080ピクセル)の3D映像として水平に1ラインごと振り分けて表示される仕組みだ。大型ハイビジョンテレビで偏光方式の3D映像を観ると、垂直解像度の不足を感じてしまうことが多かったが、オリジナルの垂直解像度が維持される本機の3D画質はその不満を抱かせないのである。「ヒューゴの不思議な発明」をじっくり観賞して3D演出の妙味を思い切り堪能、メガネが軽くて快適な偏光方式の3D表示は、4Kテレビで初めてその魅力が十全に発揮されると確信した。
ソニー製テレビの音のひどさ、貧弱さについてはこれまで本欄を含めて幾度となく指摘してきたが、パネル本体両サイドにスピーカーを充てた本機の音はとても本格的、その音のよさに感心した。水平視野角約60度が実現できる1.5H視聴時に理想的なステレオ配置(60度の正三角形)となるサイドスピーカー方式を採ったことがまず正しい。付属スピーカーのキャビネットは剛性の高いアルミ製で、フルレンジ的な動作をさせた2基のスコーカーでツィーターを挟み込む仮想同軸配置の上下にウーファーを2基装填した3Way構成。内側約10度の角度をつけてファントムセンターにリアリティを付与する工夫が施されている。
NHKが制作した小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラが演奏するラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」(48kHz/24bit、リニアPCM 2ch)などのライブBD作品を観てみたが、オーケストラの雄大かつ緻密なひびきを見事に描写し、ぼくを驚かせた。一般家庭の茶の間からゴージャスなステレオセットが消えて久しいが、本機が達成した音質ならばじゅうぶんにその代りが果たせるのではないかと思うほど。映画の声も肉厚で力強く、リアリティに富んでいる。
「このご時世に168万円のテレビってありえないでしょ?」という声があるかもしれないが、その内容・クオリティーを精査すれば、この価格はけっして高くないと思う。本機唯一の問題は、映像を映し出していないときのその“存在の耐えられないデカさ”をどうするかということかもしれない。画面表面は映り込みの激しい光沢パネルだし……。その存在を目立たせないインテリア上の工夫を施すこと、そんな知恵を持ったインストーラーや高級電器店に、この商材を生かす活躍を望みたいと思う。
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