有機ELにスマートテレビ、そして注目の新技術――2013 International CES総括(2):麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)
「2013 International CES」では、ソニーやパナソニックが大きな存在感を示した。4Kテレビの動向を追った前編に続き、後編では有機ELテレビや麻倉氏が注目した最新技術について解説してもらおう。
家丸ごとの省エネを提案
――スマートテレビ関連はどうでしたか?
麻倉氏:米国ではIPTVの機能のないテレビは売れない状況ですから、たくさんありました。ただ、テーマとしてのスマート化は昨年までに出し尽くされた印象で、今年は細かい使い勝手に踏み込んだ提案が多かったです。
例えばパナソニックのスマートテレビは、カメラと顔認識機能を使い、テレビの前に座った人にあわせて専用のポータル画面を表示します。家族で1台のテレビを使っている場合には便利ですね。また検索も1つのテーマになっていて、ユーザーの履歴などを参照して、頻繁に試聴するコンテンツをレコメンドする機能もありました。
また、パナソニックは米国第2位の通販会社HSN(Home Shopping Network)と提携し、VoDでテレビショッピングが楽しめるようにしました。テレビで通販番組を見て、そのままインターネット経由で購入できる仕組みです。
――セカンドスクリーンの提案はありますか?
麻倉氏:米国はタブレットの普及率がすでに44%に上っていますから、セカンドスクリーンの提案は重要です。例えばタブレットの画面でコンテンツを選び、テレビ画面で視聴できます。シャープが「Netflix SecondScreen」というアプリを出したかと思えば、パナソニックは「YouTube SecondScreen」です。ソニーは人物検索などが行える「TV SideView」と、さまざまな提案がありました。
東芝のホームクラウドサービスもユニークです。家の中で使う家電製品の電力消費量を一定の枠内に収めるため、人に代わって制御してくれるというもので、例えば夕食前などはいろいろな家電を使いますが、オーブンレンジなど調理用の機器を優先し、洗濯乾燥機など遅くなってもかまわないものは一時停止します。使う人の利便性を確保しながらピークシフトを実現する仕組みです。
ホームオートメーションの要素もありました。例えばテレビを見ているときはLED照明が室内を明るく照らしますが、映画を再生するときは照明を落とし、色温度まで変えてくれます。現在でもホームシアター用のコントローラーがあれば同じことができますが、クラウド連携で外部サーバが電力の使い方を検知して指令するというデモンストレーションは面白かったですね。
音のいいワイヤレスサラウンド「WiSA」
――テレビ以外の注目技術はありますか?
麻倉氏:WiSA Associationに注目しました。WiSA(Wireless Speaker and Audio)は、マルチチャンネル対応のワイヤレススピーカーです。これまでと違うのは、もともと軍事用に使われていた5GHz帯を使い、1チャンネルあたり96kHz/24bitまでのハイレゾ音声を伝送できること。スピーカーにアンプを内蔵し、完全に特性のあったアクティブ駆動が可能です。また近い将来、192kHz/24bitまで拡張する予定です。
――部屋の中にスピーカーケーブルを這わすことなく、サラウンドにできますね
麻倉氏:そうです。しかもオートコンフィグレーション対応で導入も楽。視聴者が室内を移動したら、そこをスイートスポットにするように追従します。なにより従来のワイヤレスサラウンドシステムなどと比べ、とにかく音が良いことに注目でしょう。この統一規格に沿って、ハーマンなどのオーディオメーカーが製品を作るそうです。サラウンドをより手軽に楽しめる技術ですから、大いに期待したいですね。
サラウンドといえば、米DTSの「DTS HEADPHONE:X」も良かったです。ヘッドフォンでサラウンドといえば、米Dolbyの「Dolby Headphone」が有名ですが、いまひとつ前方定位が難しかった。しかしDTS HEADPHONE:Xは、しっかり前方も出ていました(→関連記事)。
――最後に2013 International CESの総括をお願いします。
麻倉氏:今回はソニーが“物作り”を訴えたことが耳目を惹きました。例えば開幕前夜のプレスミーティングでは、開始前に「Xperia Z」を手作りしている映像を見せました。会見中も昨年まではハリウッドスターなどがゲストとして登場しましたが、今回はありません。平井さんは「製品がスターです」と言っていました。
すでに話題になっていますが、「Xperia Z」は今のソニーを象徴する製品だと思います。これまでは別会社だったのでAV関連技術を思うように生かせなかったのですが、一体になったので障壁がなくなり、良い技術を導入できました。組織を変え、サービスやコンテンツ、そして物作りをしっかりやるというソニーのメッセージが明確に伝わったと思います。
ほかにもシャープのICCテレビ(日本ではICC PURIOS)、ソニーのデジカメ「DSC-RX1」など、本質的な機能を最高級のところにまで持っていく“日本のお家芸”が注目を集めました。日本の家電産業が世界で重要な位置を占めていること。尊敬されるメーカーはほかにはないものを持っていること。今回のCESでは、それらを改めて実感し、同時に将来性を感じましたね。
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