“黒船”は意外と小回りがきく、「Hulu」に聞いた動画配信の今(2/2 ページ)
2011年9月、「黒船来航」と騒がれた「Hulu」の日本上陸。競合サービスも力をつけ、競争が激しくなる中、同社はどのように差別化していくのだろうか。同社プロダクト部の福田剛部長に話を聞いた。
エンターテイメントはサポートがキモ?
Huluのサイトをみると、最近のネットワークサービスに慣れた人はちょっと驚くかもしれない。それは、トップページにカスタマーサポートの電話番号が掲載され、しかも受付時間が12時〜23時となっているからだ。問い合わせ時には会員ページにログインさせ、FAQ(よくある質問)に飛ばし、それでも解決しないときだけ問い合わせフォームが現れるといった迂遠(うえん)なサポートが多い中、本来なら“当たり前”の電話番号が、むしろ新鮮に見える。
「23時まで電話を受け付けているのは、われわれが提供しているのが“エンターテイメント”だからです。やはりエンターテイメントは夜に視聴することが多いので、受付時間もそれに合わせなければなりません」。ほかにも、メールやTwitterアカウント(サポートおよびHulu Japan)宛の問い合わせにも応えるという。「SNSならコンテンツのリクエストなども気軽にできます。サポートはすべてインハウス(社内)。すべて社員が対応するので、マニュアルだけでなく柔軟に対応できます」(同氏)。
トラブル発生時、解決には技術部門の協力が欠かせないが、サポートと技術の“距離が近い”のもHuluの特長だという。これは比喩的な表現ではなく、物理的に近いのだ。「Huluのオフィスは、日本、米国ともにワンフロアが基本。サポートと技術がすぐ近くにいるので、情報共有や対策も素早くできます」。
この体制により、細かいサポート…例えば特定のコンテンツやスクリーン(視聴デバイス)に生じたトラブルにも即座に対応できる。「以前、あるコンテンツでApple TVでのバッファリングが終わらないというトラブルがありましたが、バックエンドを調べて5分後には解決できました。またThinkPadユーザーから『サインアップ時に誕生日が選べない』という問い合わせがあったときは、ThinkPadの特定のドライバーを検証し、2時間後にはサインアップが行えるようになりました」。ちなみにThinkPadの一件は福田氏が休暇中に生じたが、旅行先から開発チームと電話で連絡を取り合ったという。
「われわれはエンターテイメントを提供しているので、ユーザー体験が最も重要。スタッフが、皆同じ方向を向いているので話は早いです。それは米国も同じ。以前、米国板Huluに掲載されていた『交響詩篇 エウレカセブン』第50話のサムネイルについて、『それは50話を代表するサムネイルではない』と指摘したことがあります。彼らもエンターテイメントが好きで、コンテンツに思い入れのある人たち。サムネイルはすぐに変更してくれました」。
黒船来航から1年半。華々しいデビューからは想像しにくいが、Huluは日本市場に合わせるために意外と地味な努力を続けていた。「サービスコンセプトは米国と変わりませんが、それぞれのマーケットにあった形で展開していきます。さまざまな積み重ねで『Huluっていいよね』と思ってもらえるようにしたい」(福田氏)。
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