ハイレゾの夜明け、もうマニアだけのものじゃない(前編):麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/2 ページ)
今年の「オーディオ&ホームシアター展」を“ハイレゾ・オトテン”と位置付けるAV評論家・麻倉怜士氏。今後のオーディオ市場はハイレゾなしでは語れないという。それを象徴するのがソニーの新製品群だ。
――実際の音はいかがですか?
麻倉氏: HAP-Z1ESでDSDファイルを再生したときの音は素晴らしいですね。アナログFIRフィルターでアナログ波形を取り出すという仕組みが実用化されたのは初めてですが、非常に良い音でした。
アナログFIRフィルターは、DSD信号のD/A変換方式として理想的といわれるもの。実際の回路構成は、左右チャンネルそれそれぞれ独立させた構成で、片チャンネルあたり4個のフィルターユニットを使用、1クロックディレイ差動合成動作させる。この回路によりDSD信号に含まれる高域ノイズを効果的に低減できるという
それから、「HAP-Z1ES」は音源がリニアPCMでもDSDに変換してから再生する仕様ですが、リニアPCMが持つしゃっきり感が、“なよっ”としてしまうのが問題でした。それをソニーに指摘したところ、8倍オーバーサンプリングの従来型D/A変換も可能にすると話していました。12月頃には新しいファームウェアが提供されるはずです。
――DSDも盛り上がりそうですね
麻倉氏: 課題は、「mora」のハイレゾ音源配信にまだDSD音源がラインアップされていないことでしょう。ただ、既にe-onkyo musicやOTOTOYはDSDを含めてラインアップが増えているので、moraが対応するのも時間の問題だと思います。
一方で、「mora」のハイレゾ配信参入で既存の配信サイトも活性化しています。もちろん、e-onkyo musicにしてみればソニーが独自にやることになって音源独占ではなくなったわけですが、ワーナーやユニバーサルといったほかのコンテンツホルダーは両方に分け隔てなく提供していくそうです。
むしろ、従来からある過去のアーカイブ的なコンテンツのハイレゾ化だけではなく、新規録音のハイレゾ音源をユーザーにも届けようという動きが出てきたことは注目です。例えば、ポール・マッカートニーの新しいアルバムは、CDの発売と同時にハイレゾ配信を始めています。
――moraにはポップスの曲も多いですし、先週はランティスとe-onkyo musicがアニメソングのハイレゾ音源配信を発表しています。ジャンルの拡大にも期待できそうです。
麻倉氏: 償却済みのコンテンツをリマスターするだけでなく、ハイレゾ配信を見越して新規録音を行い、そのままのクオリティーで配信する。そういう流れが出てきました。ソニー参入の波及効果で市場が活性化し始めた証拠です。ハイレゾ音源は、もうマニアだけのものではありませんね。今回のオトテンでそれを強く感じました。
――後編では、ユニバーサルミュージック「HIGH FIDELITY PURE AUDIO」の動向に加え、そのほかのイベントや展示品で麻倉氏の琴線に触れたものをピックアップします。
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