コストパフォーマンスの高いイヤフォンを探し出せ!――バイヤーズガイド2014年“春”(実売5000円以下編):3匹が聴く!(2/2 ページ)
今回は、価格帯別に製品をピックアップし、目の肥えた3人のレビュアーが横並び試聴を行うバイヤーズガイドをお届けしよう。第1回は5000円以下で購入できる高コストパフォーマンスモデルがテーマ。思わず「え、この値段で?」という製品も見つけた。
フィリップス「SHE9712」
フィリップスの「SHE9712」は、同社のヒット商品「SHE9700」のリニューアルモデル。先代が販売終了となる際、市場から惜しむ声が多かったためラインアップに加えられたというもので、カラーはブラックから鮮やかなレッドに変更された。ただし、8.6ミリ径ダイナミック型ドライバーに独自の「ターボバス孔」という構造、そしてインピーダンス値などのスペックも従来機と変わらない。
野村 ☆☆☆☆☆
この価格帯での音の良さはダントツ。前モデル「SHE9700」が名機として騒がれたけど、その良さをそのまま引き継いでいる。音楽性が豊かでグルーヴ感も高い。純正からステップアップする第一歩としてかなりオススメ。
坂井 ☆☆☆☆☆
「この値段でいいの?」って思うほど、1つ1つの音がしっかりと立っている。変な癖もなく、どんなジャンルの曲でも無難に鳴らしてくれるので安心感がある。コストパフォーマンスの高さはダントツの1本だと思う。
滝田 ☆☆☆☆☆
美しいピアノの旋律や艶(つや)のある女性ボーカル、打ち込み系の疾走感とジャンルを選ぶことなく、ちゃんと鳴らしてくれる。この価格帯では、まさに奇跡のサウンド。さすがはフィリップスのゴールデンイヤーのお墨付き。
JVC「HA-FXD80」
JVCの「HA-FXD80」は、この価格帯には珍しいステンレス筐体(きょうたい)を採用したモデルだ。カーボンナノチューブ振動板を採用した5.8ミリ径ドライバーを搭載し、ハウジングとドライバーユニットを直接つなぐ「ダイレクトトップマウント構造」、内部に真鍮製リングを配した「デュアルシリンダー構造」など、かなりぜいたくな仕様。それもそのはず、2012年の発売当時は7000円前後とワンクラス上の価格帯にあった。発売から時間が経過し、5000円を切る価格になったお買い得モデルだ。
野村 ☆☆☆☆
この価格帯ではとてもいい音だと思う。JVCならではのたっぷりとした低域や、中高域の聴かせ方が上手。金属筐体のデザインは、男性目線から見るとなかなかカッコいいのでは。逆に女性からはあまり人気を集めないかも。
坂井 ☆☆
女性目線だと装着するには勇気がいるデザイン。例えが古いけど、ベーゴマみたい。手でぐっと抑えると低域がしっかり出るけど、多くの女性はイヤーチップのサイズをしっかり合わせないと、耳から飛び出てしまう不安感がある。
滝田 ☆☆☆
弾丸のようなクールでメタリックな筐体は見た目だけで買いたくなるほどスタイリッシュ。中高域はふつうに鳴り、低域がやや強めなサウンドバランス。イヤーチップを合わせて奥にかなりしっかり突っ込まないと、装着感に不安が残る。
ソニー「XBA-C10」
ソニーの「XBA-C10」は、低価格ながらバランスド・アーマチュア型ドライバーを搭載した製品。補聴器にルーツを持つBA型ドライバーだが、この製品に使われているのはソニーが音楽再生用に開発したもので、それをハウジング内で“縦”に配置したシングル構成となっている。この価格帯にもちらほらとBA型ドライバー搭載モデルはあるが、ソニーブランドの「XBA-C10」はファンにとってうれしい存在だ。ちなみに坂井さんはエクササイズ時に愛用しているという。
野村 ☆☆☆
3000円台でBAドライバーを積んだという事実に、最初はかなりビックリした。音はいい意味でBAドライバーらしくなく、自然な音色。中域をしっかり聴かせる分、高域低域は案外欲張ってないところも好感が持てる。
坂井 ☆☆☆
この価格帯には珍しいBAドライバーを採用したモデルというのも面白い。それぞれの音が意外としっかり分離して聴こえる。ふだんマラソンの時に使っていて、フィット感はいいものの、タッチノイズはやや気になる。
滝田 ☆☆☆☆
コンパクトな筐体と三角形のデルタ形状フィッティングアシスト機構が、耳にピッタリとフィットする。女性ボーカルなどを聴くと、かなり伸びやかで好印象。BAドライバーを使用しているのに、ダイナミック型のように力強い。
ZERO AUDIO「ZH-DX210-CB」
「ZERO AUDIO」は、京都に本拠を置く協和ハーモネットが展開するオーディオブランドだ。大手家電メーカーに比べると知名度は低いものの、実はオーディオマニア層や業界関係者にファンが多いことでも知られる。外装にカーボンを使った渋めの製品を多くラインアップしており、今回取り上げる「ZH-DX210-CB」もカーボンとアルミによる複合ボディーだ。同社では8.5ミリ径ダイナミックドライバーによる“重低音モデル”と位置づけているが、今回の評価メンバーにどう受け止められるのか。
野村 ☆☆☆
低域はやや強めながらもソツのない音のまとめ方で好感が持てる、この価格帯としては聴きやすく、中高域も癖がなく聴き疲れしない。カーボンを使ったルックスは完全に男性向きかもしれないが、素直に格好いいと思える。
坂井 ☆☆☆
ビートの利いたブラックミュージックなどを聴いてみると気持ちがいいかも。見た目に関しては、ボディ全面にカーボンを敷いてあって、値段以上の高級感あり。装着感が不安なのと、ケーブルの頼りなさがもったいない。
滝田 ☆☆☆☆
とにかく個性的。人と違うアイテムが欲しい人にとって、カーボンとアルミハウジングを組み合わせた素材感はウケが良さそう。低域が強めながら、意外と癖がなく聴き疲れしない。コードは細くて絡まりそうで、ひと工夫ほしい。
まとめ
5000円以下クラスは、非常に分かりやすい結果になった。音のクオリティーが圧倒的な支持を得てフィリップス「SHE9712」が、栄え(だけ)ある「5000円以下のGood Buy〜すっごいコストパフォーマンス賞」に輝いた。今後、他の価格帯も順次掲載していくが、ここまでハッキリとした結果が出たケースはほかにない。さすがは市場の声で再販された名機といったところか。
もう1つ明らかになったのは、男性が好むデザインは、かなりの確率で「女性受けしない」ということだった。分かってはいたが、自分が良いと思っていた製品が目の前でケチョンケチョンにされ、男性陣はちょっとショックを受けている。JVC「HA-FXD80」が、まさかのベーゴマ扱いとは……例えが的確すぎて反論できないではないか。
次回は5000円から1万円で購入できる製品を取り上げます。お楽しみに。
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