手が届く“全部入り”――東芝「Z9X」はリビングのための4Kテレビ:本田雅一のTV Style(2/2 ページ)
この春の4Kテレビ新製品で個人的に注目しているのが、東芝「Z9X/J9X」シリーズだ。手が届く価格帯と画面サイズながら、画質面と機能面の両方が充実した“全部入り”のモデルといえる。
東芝製テレビの場合、かつて「CELL REGZA」という当時の技術を総結集したテレビがあったが、このときにはこの数字を超える明るさも出していたが、全画面では同時に光ることができなかった。実は全画面で超高輝度というパネルは、他社を含めてほかに存在しない。
全画面で700nit相当というと、昨年発売されたフルHDテレビのレグザ「Z8」シリーズに近いスペックで、これを4Kという画素の細かい液晶パネルで実現しているところもポイントだ。Z8で導入された輝き復元(高輝度バックライトを活用し、輝き部分をより明るく見せる処理)、ハイダイナミックレンジ復元(高輝度のダイナミックレンジが失われている映像情報を復元する処理)や、「きらめきダイレクトLEDコントロール」と名付けられた、細かなエリア分割によるローカルディミングとコントラスト拡張機能を組み合わせた新たな映像処理も加え、より効果的に見栄えのするテレビ映像を実現している。
ローカルディミングというと、「映画における暗いシーンでのダイナミックレンジやコントラスト感を高めるのに有効」というイメージがあるかもしれないが、決してそれだけではない。超高輝度からLEDオフまでの間を適切に制御することで、平均輝度の高いテレビ番組でも有効に活用できる。ドラマやアニメもテレビ放送の作品は平均輝度が高いものがほとんどだ。
作品鑑賞の”ディスプレイ”ではなく、”リビングのための家族で楽しむテレビ”
筆者がチェックした時は、まだ最終的な画質ではなく、繊細な映画画質などは出荷までに最終的な追い込みがかけられるはずだ。しかし、高輝度を利用したテレビ系映像の画作りについては、「Z8」シリーズの経験を生かしてうまく進化させている印象を受けた。広色域の活用もフルHDテレビからの応用が利いている。
お馴染みのUSB外付けHDDを活用した全録機能「タイムシフトマシン」と、それをデータベース化して楽しめる「ざんまいプレイ」は、BS/CSの放送局を1つ追加できる「タイムシフトプラス1/ざんまいプライプライス1」に進化してさらに利便性を向上。さらにゲームプレイ時の超低遅延化(4Kにも関わらず0.6フレーム)といった要素も加え、リビングで楽しむための“家族の4Kテレビ”に仕上がっている。
テレビは画質だけを求めると、とかく”ディスプレイ”としての機能に偏りがちで、映画画質だけ、ビデオ再生画質だけを評価してしまうこともある。しかし現代のテレビの使い方は多様だ。そして何より、テレビ放送の番組を楽しむのが、やはり正しい向き合い方なのだとも思う。
もちろん、両方のニーズにきちんと対応することが肝要なのだが、レグザの場合は全録機能と「ざんまいプレイ」から分かるように、日本の放送事情に特化した機能が盛り込まれている。そこに今回の”テレビ番組がよりきれいに見える”要素を加えてきたことで、そのコンセプトがより明確になってきたように思う。
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