オープンかクローズドか――ヘッドフォン・バイヤーズガイド2014“春”(実売3万円〜5万円編):三匹が聴く!(2/2 ページ)
実売3万円〜5万円の価格帯には各社の高級モデルが並ぶ。その中でもっとも評価が高かったのは、あの製品だった。
フィリップス「Fidelio X1」
フィリップスのオーディオブランド“Fidelio”から登場したプレミアムヘッドフォン。世界に57人しかいないフィリップスのサウンドエンジニア“ゴールデンイヤー”が開発の初期から一貫して関わったという。
50ミリ径のドライバーを搭載した開放型で、イヤーパッドには低反発フォームとベロア素材を採用して装着感と安定性を両立。ヘッドバンドには高級感を演出する牛革を使用している。ヘッドフォン本体の重量は440グラム。
ケーブル長は3メートル。ケブラー素材で覆い、タッチノイズを軽減した。プラグは6.4ミリステレオの24K金メッキ。3.5ミリアダプターやケーブル収納クリップが付属する。
野村 ☆☆☆☆☆
もっと高額でもおかしくない素晴らしい音作り。エネルギーを出しつつも、バランスを整えるのは意外と難しいが、それをいとも簡単にやりのけた一本。音のきれ、ダイナミックレンジの広さなど他に類をみない優秀さを誇る。このポテンシャルを最大限に引き出すアンプ探しがちょっと大変。
坂井 ☆☆☆☆☆
多くのゴールデンイヤーがお墨付きを与えただけあって、さすがの音作り。ジャンルを問わない、汎用性も高く、音楽やミュージシャンが持つエネルギー感まで伝えてくれるようなリアル感もあり。個人的には「X1」という名前が好きです(笑)
滝田 ☆☆☆☆☆
装着感は非常に心地良く、ベロアのイヤークッションも気持ちがいい。高級感のある見た目は、メッシュなどがいかにも男性的なデザイン。音は全体的に忠実で、臨場感もあり。低域から高域まで音のつながりがスムーズで、まろやかな耳当たり。打ち込み系の音楽も意外としっかりと表現してくれる。
B&W「P7」
2013年の秋に発売されたBowers & Wilkinsの高級ヘッドフォン。本革とステンレススチール、アルミニウムの素材感が美しいシックなデザインだ。密閉型のハウジングに40ミリ径のドライバーを収めている。
ドライバーのフレーム背面にはフィルターで覆われた空気孔があり、振動板の背圧をコントロール。均一なピストン運動を可能にしたという。またボイスコイルはアルミ被覆銅線を使って軽量化している。
ケーブルも着脱式で、通常の1.2メートルケーブルのほかにiPhone対応のリモコン付きケーブルが付属する。さらにイヤーパッドも交換可能だ。
野村 ☆☆☆
見た目は高級感があるものの、デザイン自体があまりにも年齢層、ジャンルともオジサマ向けで狭い感じ。おそらく50代でクラシック時々ジャズみたいな人にマッチする。とはいえ、音は意外とオールジャンルに寄り添うような感じに。クオリティ面はかなり高い。
坂井 ☆☆☆☆
元々「P5」を最初に聴いて、クラシックやジャズを楽しんだ私個人としては、非常にB&Wは好きなブランドの1つ、音のつや感などは非常に好きでクラシックやジャズなどは聴いていて気持ちがいい。打ち込み系はちょっと微妙かな。リケーブルなどに期待したいところ。
滝田 ☆☆☆
金属部分やレザー部分など、隅々まで良い素材を使っていて、プロダクトとしての質感は高い。だが、そのデザインはちょっと「おじさん向け」といった印象が否めない。音は中高域寄りで、低域は少し弱いサウンドバランス。値段も少し高めなのは厳しいか。
デノン「AH-D600EM」
「AH-D600EM」は、デノンのオーディオファン向け製品ライン「MUSIC MANIAC」(ミュージックマニアック)の上位モデルにあたる密閉型ヘッドフォン。ハウジングには音響特性に優れたGFRP(グラスファイバー入りの樹脂)を採用している。
ドライバーは50ミリ径で、振動板にはパルプにナノファイバーを混ぜたユニークな素材を採用した。この振動板は、硬いが不要共振が少ないという特性を持ち、また耐久性にも優れる。さらに振動板のエッジを柔らかい素材で支持する仕組み(フリーエッジ)により、振動板が従来よりストレスなく振動できるという。
よく見ると5角形をしているイヤーカップには低反発素材を採用、耳をすっぽりと包み込む。ケーブルは着脱式で、3メートルのOFCケーブルとiPhone対応のリモコン付きケーブル付属する。重量は365グラム。
野村 ☆☆☆☆
低域がソリッドでフォーカス感は高め。いっぽうの高域は、自然に伸び上がっていて、音像をしっかりと伝えてくれる。この音のまとめ方はなかなかにハードロック向き。ベース、ドラムのタイトさがロック好きにとってはかなり好ましい。
坂井 ☆☆☆
音に爽快感があって好印象。いい意味で残響感を残さず、音の抜けも良い。が、低音がボリューミー過ぎて、ややもったりしているのが気になった。あとはデザインがややファニー。白のステッチなどは、かなり好みが分かれるかも。
滝田 ☆☆☆☆
スッキリとした高音とルックスに見合う太い低音が特徴。音が全体的に前に出てくることで、音楽のパワフルさが気持ちよく入ってくる。デザインはヘッドフォン単体ではいいんだけど、装着すると思いのほか大きいので、持ち歩きはきついか。
まとめ
今回は満点が出た。フィリップスの「Fidelio X1」はレビュアー3の人がべた褒めするほどの高パフォーマンスで、ゴールデンイヤーも面目躍如といったところか。モノとしての質感も高く、所有欲をそそる“Good Buy”製品といえる。
次回はいよいよ最終回。5万円以上で“価格上限なし”の過酷な高級なヘッドフォンバトルを制したのは? 憧れのあの製品も登場するかも。
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