4K機器の“落とし穴”――4Kプレミアム映像の音に注目:本田雅一のTV Style(2/2 ページ)
今回は4Kテレビと4Kコンテンツを再生する装置の接続に関する話をしたい。すでにご存知の方もいるだろうが、ここには1つ“落とし穴”があるからだ。落とし穴は存在が分かっていれば、避けることもできる。
4Kプレミアム映像の音はどうすれば聴ける?
問題は”音”の伝送経路だ。
HDMIを通じて接続する場合、その中には映像と音が混在して送り出される。1本のケーブルで絵も音も出るわけだ。この点は4Kでも全く同じだが、HDCP 2.2に対応した機器であることを求められる。
つまり、AVアンプを使ってサラウンド音響を楽しんでいる方、あるいはHDMI対応サウンドバーでテレビの音質を改善している人。こうしたユーザーは、音響機器側もHDCP 2.2に対応していなければ、それら音響機器を通じて4Kテレビへと接続できないことになる。
ところがHDCP 2.2対応LSIは、ディスプレイ用はあってもオーディオ製品に使えるものがつい最近まで存在しなかった。今年後半に出てくる新製品は、HDCP 2.2にも対応してくるのでは? と思っているが、世の中にあるHDMI対応オーディオ製品の大多数はHDCP 1.4にしか対応していないと思っていい。
”これを買い替えろというのか!?”と、メーカーに怒りをぶちまける人も出てくるかもしれないが、メーカーもそうした状況を産みたいわけではない。より安全な経路で接続しなければ映像を流してはいけませんよ、と映像の権利を持つ側が譲らないのであれば、対応する機器を素早くラインアップするほかに手はないのだ。
では絶望的か? といえば、実は回避する方法がある。北米では昨年から、ソニーが4K映画をダウンロードできるネット対応STBを発売していた。この製品も、当然ながらHDCP 2.2に対応しているのだが、実はHDMI出力を2個持っており、片方をオーディオ専用出力として、”4K映像をHDMIケーブル上に載せない”ことでHDCP 1.4でオーディオを出力。もうひとつのHDMI出力からHDCP 2.2でディスプレイに4K映像を送り出す仕組みだ。
言い替えれば、HDMI出力が1個しかない(あるいは2個あってもオーディオ専用出力を持たない)機器は、音の出力で問題を抱えているといっていいだろう。もちろん、接続先にオーディオ機器がなく、テレビのスピーカーから音も再生するのであれば問題はない。しかし、せっかく映像が美しくなったのであれば、音もより良い機器で楽しみたいと思うのは当然のことだ。
残念ながら、現在発売されているシャープの4K試験放送対応チューナー内蔵レコーダー「TU-UD1000」には、HDMIが1系統しか備わっておらず、筆者宅でも4K映像は楽しめても音が出ない……という悲しい状況だ(プロジェクターのためディスプレイから音が出ない)。もちろん、そうなることは分かった上で4K放送の品質確認のためにつないでいるのだが、何も知らずに購入する方にとっては、大きな落とし穴だと思う。
これだけ”大きな穴”。HDMI出力を工夫するだけなので、なるべく早く塞いで、今後の製品は余分な知識なく購入できるようにしてほしいものだ。ちなみに筆者の得た情報によると、発売が予定されているソニー製チューナーには2つのHDMI端子が存在するようだ。
関連記事
- 機能でも”カッコよさ”を追求する欧州の4Kテレビ
「IFA Global Conference」の番外編として欧州を中心としたテレビメーカーの動向を紹介しよう。あまり馴染みのないメーカーばかりだが、日本メーカーとは全く違う方向性が面白い。 - 手が届く“全部入り”――東芝「Z9X」はリビングのための4Kテレビ
この春の4Kテレビ新製品で個人的に注目しているのが、東芝「Z9X/J9X」シリーズだ。手が届く価格帯と画面サイズながら、画質面と機能面の両方が充実した“全部入り”のモデルといえる。 - ソニーのテレビ事業分社化と“プレミアム4Kテレビ”の関係
なぜソニーはVAIO部門を売却し、テレビ部門は100%小会社として残すのだろうか。今回の決断は、1月の「International CES」前までに決められた可能性が高い。 - 4Kテレビ発表ラッシュ! 3社の新技術と画質をチェックする
パナソニック、東芝、ソニーが相次いで4Kテレビを発表した。各社が取り入れた最新技術トレンドを俯瞰(ふかん)するとともに上位機の画質をチェックしていこう。 - 自宅でも4K試験放送が楽しめる! シャープが対応レコーダーと新型4Kテレビを発表
シャープは新型4Kテレビ「UD20」シリーズ3機種と4K試験放送対応のCS124/128度チューナーを搭載したHDDレコーダー「TU-UD1000」を発表した。NexTV-Fが6月2日から実施する4K試験放送の視聴や録画を自宅でも行える。 - 4Kネイティブ映像がもたらす“リアリティー”の世界
6月2日にスタートした4K試験放送「Channel 4K」。さっそくシャープ「TU-UD1000」を自宅シアタールームに導入したAV評論家・麻倉怜士氏にその魅力を聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.