大切なのは技術より“使う人にとっての価値”――開発担当者に聞く「ルンバ980」:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/3 ページ)
「ルンバ980」はこれまでのルンバと同じようなフォルムだが、中身はまったく別物だ。「最初のルンバ以来、最高の出来」という自信作だが、開発担当のケン・バゼドーラ氏は技術よりも大切なものがあるという。
ルンバのスタイルが変わらない理由
ルンバはこれまで初代モデルからずっと直径35センチの円形で、高さも10センチ弱とほとんど変わっていない。エンジニアとして、常にこれだけ新しい機能を開発しているということは、やっぱり形に関しても理想を追求するために、いろいろ模索しているはずだが、実際はどうなのだろうか?
「いろいろチャレンジは試みています。例えば、もっと薄っぺらくして、少し幅があるような形状なども試したり、見た目を重視して少し高さを高くしたりもしてみました。でも、やはり今の形状よりも動ける範囲が減ってしまったり、家具の下に入れなくなったりしたため、結局はこの形状に落ち着いたわけです。しかも円形というのはやはりロボット掃除機にとって理想の形であるのは間違いありません。特に袋小路のような場所から出る時にもっとも効果的。回転して向きを変えれば、どこにもぶつからずに戻ることができるからです。あと、地面からの高さなども、この高さや形状がおそらく理想的だと思います。ちょっとした起伏は先端からすっと上っていきますし。結局は形も同様で、過去の経験則も取り入れながら、バランスを追求した結果、今の形にたどり着いたのです」
「ルンバ980」を操る「iRobot HOMEアプリ」の画面はいたってシンプル。本体同様、「CLEAN」ボタンが表示され、スケジュールの履歴を参照する場合もメニューを辿るだけ。ほぼ迷う要素がない。そして「バーチャルウォール」もこれまでのラウンド形状から、長方形のスクエア形状に変わったが、バーチャルウォール機能と新機能「ヘイローモード」(直径約1.2メートルの進入禁止エリアを設定できる)はスイッチ1つだけで上下に切り替えるだけなので、こちらも使うために説明書いらずだ。
「誰もが簡単に使える、つまりはシンプルであるということは非常に重要です。実は、そのためにユーザーエクスペリエンスエンジニア、産業デザインエンジニアなどが、研究者などが何度もディスカッションして、アプリケーションもバーチャルウォールもこの形に落ち着きました。われわれはロボットエンジニアであり、iRobotは高度なロボット技術を持つメーカーですが、あくまでも思想の根底には“お客様主義”というものが存在します。われわれにとって大切なのは、技術そのものより、使う人にとっての価値を生み出すこと。技術や機能はなるべくインテリジェントな形にまとめ、隠しました。例えばクルマの構造を理解してなくても免許さえあれば誰もがドライブに行けるように、老若男女どなたでも同じようにCLEANボタンさえ押せば『ルンバ980』が自動的に床をきれいにしてくれる、そんな生活こそが大切なのです」
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