デジタルフィルターの仕組みと効果――ESS直系、レゾネッセンス・ラボのポケットDAC「HERUS+」を試す(5/5 ページ)
DACなどに搭載されている「デジタルフィルター」。DACチップ標準のものも存在しているが、一体どのような働きをして、どのような効果があるのか。ESS Technology直系といえるResonessence Labの製品で検証した。
リファレンスモデル「INVICTA V2」を聴いてみる
最後にレゾネッセンス・ラボのリファレンスモデルである、ラテン語で“何者にも屈しない”という異名を冠した据え置き型のDAコンバーター「INVICTA V2」を聴いてみよう。
初代の「INVICTA」からV2に進化を遂げた過程で、ヘッドフォン側のSabre DACチップを「ES9016」から上位の「ES9018」にアップグレードしている。これによりライン出力用と合わせて「ES9018」を“2枚使い”とする、非常に贅沢な仕様が本機の大きな特徴だ。ヘッドフォン、ラインともにバランス出力に対応。DACチップのポテンシャルを存分に引き出すことで、最大384kHz/24bitのDXDファイルを含むPCM系ハイレゾ音源や、DSDは5.6MHz/2.8MHzのネイティブ再生に対応した。「INVICTA V2」には全7種類のデジタルフィルターが搭載されており、フロントパネルのボリュームノブとボタンの組み合わせ操作で切り替えながら音の違いが楽しめる。
さらにUSBやS/PDIFのデジタル入力だけでなく、フロントパネルに設けたSDカードスロットに、WAV/AIFF/FLAC/DSD形式のハイレゾ音源ファイルを保存したSDXC/SDHCカードを差し込んで、ハイレゾオーディオプレイヤー的な使い方ができる機能も本機のユニークなポイントだ。デジタル入力はUSB 2.0のほかにAES/EBU、BNC、角型光端子と豊富にそろえているので、PCオーディオだけでなく、本格的なオーディオシステムの中核を担うDAコンバーターとしても活用できる。もちろんその筐体はフロントパネル、シャーシ基板ともにアルミブロックから削りだしたパーツを贅沢に使っている。
「INVICTA V2」は日本でレゾネッセンス・ラボの製品を取り扱うエミライの試聴室で、バランス接続に改造したフォステクスのヘッドフォン「TH900」をリファレンスとして聴く機会を得た。そのサウンドは「HERUS+」と同じく色づけのないフラットなバランスを特徴としながら、ソースが本来持っているエッセンスをさらに色濃く引き出す豊かな音楽性を持っていた。各デジタルフィルターのキャラクターも今回の試聴環境で鮮明に聴き分けることができる。本体も220(幅)×282(奥行き)×50(高さ)mmとコンパクトにデザインされているので、省スペース設置ができるのも本機の良いところ。ヘッドフォンだけでなく、スピーカーシステムによる再生環境を整えて、本機の実力を存分に味わうのも良いと思う。
音質のチューニングや機能設計も含めて、レゾネッセンス・ラボのラインアップには今をときめくESSの高性能なSabre DACチップが持つポテンシャルを最大限に引き出せる、正統なリファレンスデザインと呼ぶべきDAコンバーターが勢ぞろいしている。その高品位なサウンドが最も手軽に楽しめる「HERUS+」は、一度体験してみることをおすすめしたいアイテムだ。
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