ミーレのチーフデザイナーが考える新しいキッチンのカタチ:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(4/4 ページ)
Miele(ミーレ)は昨年、オーブンなどのビルトイン調理機器をフルモデルチェンジして「Generation 6000シリーズ」を完成させた。無駄をそぎ落としたシンプルなデザインが目をひく一方、新しい提案も多く盛り込まれている。チーフ・デザイナーのイェンス・コイネケ氏に詳しい話を聞いた。
日本でビルトイン家電を普及させるためには?
――ビルトイン家電をデザインするのは、フロントのフェイス部分と内側くらいしかデザインできるところがなく、通常の家電をデザインするより制約が多く、難しいのではないですか?
コイネケ氏:確かに挑戦すべきことは多いです。フロントでもハンドルくらいしか目立ったデザイン要素がなく、それでも競合相手とは違いを出さなければならないのですから。実際にミーレが最初にこの“水平デザイン”を提案し始めたのですが、今では他社もやっていて差別化しにくくなっているのは事実です。
――「IFA2015」で他の欧州ブランドのブースをいくつか見て回りましたが、写真を見返しても、単体のビルトイン家電はどのブランドか判別しづらいですね
コイネケ氏:ミーレはアイコニックな“水平のステンレス”素材を取り入れ、目を閉じても、これは目に浮かぶんじゃないかとデザインしてますが、将来的にはリサーチするなかで、変わっていきたいという気持ちもあります。しかし、ビルトイン家電はシリーズで出しているので、それだけを変えてしまうと、すべてに影響が出てしまいます。そこをどうバランス取るかという難しさもありますね。コーヒーメーカーであったり、オーブンであったり、あと電子レンジだったり。だからこそ、短絡的にデザインするのではなく、何年も先を見据えてデザインしているのですが、全く違う形にすることがデザイン的に可能なのかなど、デザイナー同士でも議論をしています。競合メーカーもさまざまなものを作っていますが、この分野では我々は先駆者として走り続けなければなりません。
――外側だけでなく、そこに「Mタッチ」のインターフェースなどのデザインも加わってくると、さらに挑戦が続きますね
コイネケ氏:インタフェースは人が「使いやすい」と感じる一番のタッチポイントであり、そこは他社との最大の違いを出さなければならないと重視しています。ここ数年で、ビルトイン家電は完全に、インタフェース込みでデザインを考えなければならなくなったと思います。他での差別化が難しいからこそです。
――最後の質問です。アメリカ向けにビルトイン家電を発表して問い合わせが非常に増えたと聞いています。一方。日本は狭い住環境だからこそ、省スペース化という意味でも、ビルトイン家電で空間を広く使うことが合理的なはずなのに、なかなか一般層にまで普及しているとはいえません。今後、日本国内で、ビルトイン家電の普及を後押しするデザインは考えられますか?
コイネケ氏:まず、なによりもサイズが重要ですね。レンジなどをコンパクトなビルトインタイプにすることで、これまで電子レンジなどが置いてあったところに新たな調理家電を置くスペースが生まれます。サイズを小さくすることで、日本だけではなく、韓国、中国などの市場も視野に入ります。すると、それぞれの国は文化が違うので、サイズだけではない部分で、それぞれローカライズすることも考えなければなりません。いずれにしても、「Design for life」という理念を大事にして、今後もデザインしていきます。
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