「もっと自然界に近づける」――“テレビ選びの新基準”を目指す「ドルビービジョン」
ドルビージャパンがプライベートイベント「Dolby Vision Day 2016」を開催し、HDR技術「ドルビービジョン」を改めてアピールした。2017年にはドルビービジョン対応のUHD BDプレーヤーが出てくる見通しだという。
ドルビージャパンは7月26日、プライベートイベント「Dolby Vision Day 2016」を開催し、HDR(ハイダイナミックレンジ)技術の「ドルビービジョン」を改めてアピールした。
ドルビービジョンは、ドルビーが人の目の特性を研究して作ったPQ(Perceptual Quantization)カーブをベースにしたHDR技術だ。同社がPQカーブをSMPTE(米国の映画テレビ技術者協会)に提案し、ST2084という標準規格になったことで、後にUltra HD Blu-ray(以下、UHD BD)の必須規格となる「HDR10」などが登場する。つまり、「ドルビービジョンがなければHDR10やHLG(ハイブリッドログガンマ)もなかった。すべてのHDRはドルビービジョンが元祖だ」(AV評論家の麻倉怜士氏)
UHD BDの仕様にもなっているピーク輝度1万nitsまでを表現するならドルビービジョンの12bitガンマが効率的と指摘する麻倉氏。現在のテレビは明るいものでも1000nitsほどしかないが、将来的には12bitが生きてくるかもしれない
残念ながらドルビービジョンはUHD BDの規格争いに敗れ、オプション規格という位置付けになった。しかしHDR10がその名の通り10bitなのに対し、ドルビービジョンは12bit。さらにHDR10はスタティック(静的)なメタデータしか持たないが、ドルビービジョンはシーンに合わせて「時々刻々と変わるメタデータ」(麻倉氏)を使えるといった技術的な優位性がある。これらはディレクターズインテンション(制作者の意図)を表現するのに重要だという。
なお、現在のUHD BDプレーヤーはドルビービジョンに対応しておらず、コンテンツも出ていないが、将来的には上位製品として登場する見通し。「2017年にはドルビービジョン対応のUHD BDプレーヤーが出てくるだろう。タイトルについてはユニバーサル・ピクチャーズが25タイトルを対応させると聞いている」(米Dolbyののコンシューマイメージング担当バイスプレジデント、ローランド・ヴライク氏)
それまでの間、ドルビービジョンが活躍する場所は主にネット動画配信になる。今回のイベントでは、NETFLIXのオリジナルドラマ「マルコ・ポーロ」や、ひかりTVが8月下旬に配信を開始するスポーツ映像の「Red Bull.Fighters」、米VUDOが配信している映画(日本でサービスは提供していない)などのデモが行われた。NTTぷららの技術本部長、永田勝美氏は、「映像の品質は解像度だけではなく、フレームレート、色深度、色域、輝度も重要。ドルビービジョンはわれわれが目指すコンテンツの特性に近い」と話している。
イベントであいさつに立ったドルビージャパンの大沢幸弘社長も、「日本では画質が解像度の向上に特化してきたが、自然界には漆黒の闇から太陽の輝きまで幅の広い輝度がある。テレビを選ぶときは解像度よりもHDR性能をみたほうがいい」と指摘。その上で「良い方法がある。ドルビービジョン対応テレビを選ぶことだ」(大沢氏)と胸を張った。
なお、国内で販売されている対応テレビはLGエレクトロニクスの有機ELテレビと一部の液晶テレビに限られているが、大沢氏によると「日本メーカーもあると聞いている」という。
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