フィリップスが仕掛けたビッグデータ戦争――真のIoT活用には医療システム改革も必要(3/3 ページ)
フィリップスは現在、世界で3本の指に数えられるヘルスケアメーカーだ。同社の拠点があるオランダとIFAが開催されたドイツを巡り、そのヘルスケア戦略を探ってきた。
一般人と医師の間にある認識のギャップ
9月に開催された世界最大の家電見本市「IFA 2016」では、フィリップスのパーソナルヘルスビジネスのCEOで、チーフマーケティングオフィサーのピーター・ノータ氏が次のように訴えた。「変化の早い世の中で、今後はヘルスケアにより注力する必要がある。われわれが2万5000人を対象に行なった調査により、一般の人の74%が健康に気を使っていると回答したのに対し、医師の75%は患者にもっと健康に気をつけるべきだと答えており、認識にかなりのギャップが生じていることが分かった。われわれは、クラウドベースのヘルスケアソリューションで、このギャップを埋めなければならない」
実際、IFAのフィリップスブースは、その言葉を裏付けるように、ヘルスケア製品やビューティー製品に多くのスペースを割いていた。しかも、さまざまなヘルスケア製品、例えば、赤ちゃん用の体温計、床面に近い空気を特にきれいにする赤ちゃん用の空気清浄機、日本でもおなじみの子ども用、そして大人用の音波式電動歯ブラシ「ソニッケアー」、さらには睡眠時無呼吸症候群の治療器「ドリームファミリー」などがいずれもIoT化されていた。かつ、驚いたことにそれらをすべて専用アプリ「uGrow」によってクラウド上でデータ集約、管理できるようにつないでしまった。
「赤ちゃんはしゃべることはできないが、データでしゃべることができる」といっていたのはフィリップスのブース説明員だが、実はそれは赤ちゃんだけではなく、子どもも大人も同じだという。例えば、赤ちゃんの体温を計り続けることで、体温との体調の相関関係が見えてくるだけではなく、子どもも大人も、歯を磨いたつもりでも実際にはあまり磨けていないものだ。それを「ソニッケアー」でデータとしてしっかりと記録し続けることで、“磨いたつもり”から“ちゃんと磨いた”へ生活習慣をシフトできる。
命にも関わる睡眠時無呼吸症候群患者の呼吸データなどは、患者自身は眠っているので当然分からない。それを「ドリームファミリー」でしっかりと記録、医者とIoTで共有できれば、診療時に問診では浮かび上がらない真の睡眠習慣データなどが医者にも本人にも見えてくる。
この2016年、フィリップスは、老若男女すべてに向けての製品をIoT化した現実を見せつけた。これは、まさに“ゆりかごから墓場まで”すべてのライフスタイルをデータ化することにいよいよアクセルを踏み込み、ビッグデータビジネスに本腰を入れたと宣言したといっても間違いないだろう。
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