初の有機ELテレビとは思えない超高画質、東芝「X910」を試す:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(3/3 ページ)
国内でいち早く有機EL大画面4Kテレビを発表した東芝。「X910」シリーズの画質を何度か確認する機会があったのでインプレッションをお届けしよう。パイオニア最後の“KURO”を使い続けている筆者も、「ついに買い替えを真剣に考えるときが来たか」との強い思いにかられた。
明るい部屋での視聴には問題ないか?
液晶に比べて有機ELはピーク輝度が取れないので、「昼間の明るい部屋でテレビを観るという用途には不利なのでは?」と心配する向きもあろうかと思うが、まったく問題ないと断言できる。派手な美術が施されたテレビのバラエティー番組などは、明るい液晶で見るとその毒々しさが増長される印象なので、本機のほうがよっぽど落ち着いて見られるというのが個人的見解だ。
また、本機のベゼル幅を極限まで薄くしたシンプルなデザインも好ましい。メタリックシルバーのフロントビューを持つ専用スタンドに載せると、 2度後ろに傾く設計になっており、一般的なテレビ台やラックの上に置いてソファーに座って観た場合にぴったりフィットする印象だ。
スピーカーは、ディスプレイ下部に下向きに据えられたインビジブル・タイプ。前向き配置されたアンダースピーカーは、画面の下から音が出ているという違和感が強いが、“音が定位しない良さ”といったらいいのか、下向き配置の本機はその違和感が少ない。また音質も下向き配置とは思えない聞きやすい音にチューニングされている。
もっともこの超高画質にバランスする音かといえば、もちろんそんなことはないわけで、UHD BDなどのハイクオリティーコンテンツを楽しみたいという方は、ぜひ本機の両サイドに本格的なステレオ・スピーカーを配置していただきたいと思う。
まあそれにしても、東芝テレビ開発陣の映像を解析する力、映画を解釈するセンスというのは凄いものだと思う。有機ELデビュー作で、これほどの画質を達成するとはほんとうに驚きだ。55V型/65V型ともにそれぞれ良さはあるが、ぼくはより大画面の65V型により強く心ひかれた。今しばらく煩悩の日々が続きそうである。
同社の事業環境はますます厳しくなっているようだが、テレビ事業のこのすばらしい新芽を大切にして、ぜひ末永くがんばっていただきたい。
関連記事
- 有機ELテレビにみるソニーとパナソニックの大きな違い――CESリポート(前編)
今年のCESは、「OLEDショー」だったと語る麻倉怜士氏。パナソニックとソニーが日本市場も見据えた新製品を披露したことが最大のトピックだ。パネル供給元は同じはずの両者だが、麻倉氏によるとアプローチは大きく異なるという。一体、どういうことなのだろうか? - 見えなかったものが見えてくる――東芝の有機ELテレビでHDR版「シドニアの騎士」を堪能
HDR化のメリットは、拡張されたダイナミックレンジの中で表現力の幅が広がること。Netflixと東芝が催したHDR版「シドニアの騎士」試聴会で、それを再確認することができた。そして「ブラム!」の情報も。 - 東芝が初の4K有機ELテレビ「X910」シリーズを発表――あの「KURO」と同じ映像モードを搭載
東芝が4K/HDR対応の大画面有機ELテレビを国内で発表した。「真実の“黒”を求めて辿り着いたのが4K有機ELレグザ」という画質重視モデルだ。しかも高画質テレビとして知られるパイオニア「KURO」と同じ映像モードを搭載したという。 - 群を抜いた高画質、ソニー「Z9D」の“魅せるHDR”
液晶テレビがここまでの性能を獲得する日が来るとは。自発光タイプ派の筆者は信じられない思いがする。それがソニー「Z9D」シリーズだ。 - HDRが起こした映像革命――2016年のAVシーンを振り返る
AVシーン今年最大のトピックは、Ultra HD Blu-rayとHDR (ハイダイナミックレンジ)の登場と断言していい。今回は、その再生に必要な4Kテレビやプロジェクター、プレーヤーの動向を振り返り、印象に残った製品をピックアップしていこう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.