図解技術──。といっても、難しい話を図解して分かりやすくするこれまでの図解とは違う。自分が理解したり、相手に伝えたりするための図解というとこ『仕事が10倍速くなる最強の図解術』などの書籍でも知られる開米瑞浩(かいまいみずひろ)さんに、SEから一般ビジネスマンまで使える図解技術のやり方について聞いてみた。
図解と言えばプレゼンの時の図解やマインドマップを思い浮かべる人も多いだろう。開米さんの言う図解とどこが違うのだろうか。
「私の図解技術はプレゼンのための図解ともマインドマップとも全然違うものです。プレゼンはそもそも、言いたいことありきでそのことを伝えるためにするものですよね。私の図解は、『自分が分かっていないところはどこかを発見する』ためのものです。まずは自分のためのものであり、アイデア発想術。しかしマインドマップと違って発散のためだけにするものではないというのが特徴です」
人にうまく説明するための図解ではなく、またマインドマップのように次々とアイデアを生み出していくための図解でもない。ある物事を“考える”ときに、何が分かっていないのか、これを完全に理解するためにはどうしたらいか、そのためのツールだ。
だから、話を聞いたら理解するために図解してみることを勧める。「文章は読まないと分からないですが、図なら一目見たら理解できるでしょう。文章はややこしいことをややこしいままに表現するものだけれど、図解はややこしいことを分かりやすく表現できます」
開米さん自身、人に説明をする時に図解すると伝わりやすいことを、SE時代に身をもって学んだ。SEが書く図は、複雑なシステムの構造を表したり、その構造物を間違いなく構築して運用したりするための“設計図”にあたる。クライアントに説明する際に、その場で図解しながらシステムの概念を説明するという作業が発生する。これが開米流図解術の考え方の元となっているのだ。
さらに、「誰かから何かを聞き出すシーンに使うといいですよ」と開米さん。質問という行為には実は背景となる知識と、物事への理解が必要だ。そこで、言葉以外のもの、図解を活用して、自分自身の“何が分かっていないのか?”を把握するのである。分けてそろえて並べて表を作ると、図のように空白が出てくる。その空白について、「この空白は何? 教えて」と聞けば、分からなかったことを明確に聞き出すことができるのだ。
図解は自分が理解し、相手に伝えるためのもの。それ以外にも、分からないことを質問するためにも使えるという、アイデア発想術でありコミュニケーションツールでもあるのだ。
では、どうやったら図解が可能になるのか。実際に例を見ながら図解をしていこう。開米流図解技術の本質は、「分けてそろえて並べてピン!」だ。簡単に言うと、情報を整理整頓して、一目でピンとくるように要約せよというもの。
では、下記の例文を“図解”してみよう。
食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針
[情勢の変化]
第一段階の『分けて』とは、元の文章を短いステートメントとキーワードに分けることをいう。一文の中にも、「○○したので、××になった」のように意味が2つ3つあることがあるので、その場合は句読点で分けてしまう。たとえば、上記の例では「農業者」「食品産業」「構造改革の立ち遅れ」などがそれにあたる。文章を主語述語などの単語ごとにバラバラにしていくと考えればいいだろう。
次に、同じ種類の情報を一直線に『並べる』作業を行う。縦方向、横方向には同じ種類の情報が入るようにする。同じ種類とは、例えば、名詞・動詞・形容詞など文法的な形や、目標・結果・経過などの意味ということだ。
次は『そろえる』。主語がなかったら補ってそろえるようにする。この時、大切なのは順番だ。順番は「原因と結果」というつながりなどを表すからだ。この因果関係も調整してうまくそろえると、図のように空白の部分が出てくる。この空白が、まだ分かっていないこと。相手がうまく説明していない部分であり(敢えて隠しているのかもしれない)、自分がまだ理解していない部分でもあり、追加の情報が必要となる部分だ。
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