あなたの年金はどこに行った?キャスター・目黒陽子の「今、これが気になる」:

» 2007年09月11日 20時04分 公開
[目黒陽子,Business Media 誠]

著者プロフィール:目黒陽子

フリーアナウンサー(ライムライト所属)。大和証券SMBCを経て、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、キャスターへ転向。NHK総合「お元気ですか日本列島」「BSニュース」などを担当し、政治・経済など、情報を伝えることの大切さと難しさを学ぶ。現在は日本テレビ系列で土曜朝8時から放送されている情報番組「ウェークアップ!ぷらす」(読売テレビ制作)にて司会を担当している。同じくアナウンサーの滝川クリステルは従姉妹にあたる。ブログ:http://www.fpcaster.com/


 社会保険庁による消えた年金記録の問題に加えて、今度は市町村職員による国民年金の横領問題が次々と明るみになってきました。舛添要一厚生労働大臣が「盗人は徹底的に探し出して、牢屋に入れてやる」と宣言。舛添大臣を筆頭に徹底的に無駄を省いていただき、盗人を洗いざらい探し出してほしいものです。それでもまだ年金資金が足りないんだ、ということであれば、その時こそ国民も納得して消費税を増やし、税金を年金資金に充てても構わないと思うのではないでしょうか。まずは過去のうみを出し切り、国民に現状を報告することが大切です。そして、うみを出し切った後は、いよいよ制度の根本を見直す必要があるでしょう。

 そもそもこの年金制度が“申請主義”※であることがおかしいとは思いませんか。申請主義のため市町村職員も、「国民は複雑な年金システムなんて分からないだろう」「バレないだろう」――といった具合で犯罪を犯したのかもしれません。

※申請主義……住所変更や年金受け取りに関して自分で申告しなければ国は一切責任を負わない制度。

申請主義だから企業年金にも未払い

 問題は公的年金(国民年金・厚生年金など)にとどまらないことです。企業によっては公的年金とは別に、企業独自の年金制度を持っています。企業年金加入者のうち124万人に関しても、未払いといった宙ぶらりんの状態になっている人が多く存在することが公表されました。つまり、年金手帳で公的年金を確認して、年金記録漏れがなかったと安心していた人も、今度は企業年金を確認しなければ漏れの可能性があるということです。企業年金連合会は「転職などで本人と連絡が付かなくなったから」としていますが、これも加入者からの申請主義ばかりを主張する結果ではないでしょうか。

 「企業年金だから国は関係ないはず」と、思っている人も多いかもしれません。しかし、この企業年金連合会というのは、厚生労働省からの天下り先なのです。トップが天下るからには、厚生労働省が統括し、責任を負うべきです。企業年金の加入者に通達して、しっかり申請を促すべきではないでしょうか。それが面倒ならトップは高給で天下るべきではないのです。

401Kの運用を放棄している人が7割増

 9月6日、国民年金基金連合会は確定拠出年金(日本版401K)制度を導入する企業においても、“運用放棄”と見なされている人が約8万人もいることを公表しました。そもそも、雇用形態がもはや終身雇用ではなくなり、積み立てられた企業年金を転職時点で解約しなくてはいけないシステムをなんとかできないか。こうした問題に対し、効率的に運用できるものとして導入されたのが「確定拠出型年金」、つまり日本版401Kです。

 401Kで資金を運用しながら、転職などで手続きを忘れ“運用放棄”と見なされている人は2006年度に8万638人、その額211億円に上っています。しかも、この人数は、前年度と比べて7割ほど増えているというのです。最近、この401Kを導入する企業が増えていますが、よく分からないまま加入、そして転職をし、支払った年金は分からない……という方が急増しているということなのです。

 実は401Kは、転職をする際や自営業な場合は、自分で手続きをしなくてはいけません。それを6カ月放置してしまうと“運用放棄”と見なされ、自動的に国民年金基金連合会に移されてしまうのです。

 何が困るの? という方、よーく聞いてください。国民年金基金連合会に移された資金は、全く運用されません。寝かせた状態になってしまい、運用益は得られません。それだけではなく、毎月50円の管理手数料が差し引かれて、資産が目減りする一方です。もちろん将来的に受け取ることはできますが、そこに移管されている間は加入期間とは見なされず、「加入期間10年」の条件を満たすことができなければ、受け取ることができる年齢は、60歳より遅れるばかりなのです。

 従来の「確定給付年金」は、退社をすれば、それまで積み立てた年金も精算する必要がありました。しかし401Kは、自分で一定の手続きさえすれば、それまで積み立ててきた年金の運用成果を転職先に持ち運ぶことができます。しかし、制度の徹底が不十分なのが現状かもしれません。転職をした時に多いケースは、この持ち運びのシステムが理解されていないからではないでしょうか。なんとももったいない話です。6カ月以内に手続きしないと“運用放棄”と見なされてしまいますよ。

 では、ちゃんと手続きを自分で行って、転職先の401Kに移管すれば問題はないでしょうか? 転職先にもその制度があれば移管できますが、問題は転職先が401Kを導入していない場合です。この点については次回触れていこうと思います。

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