連載
» 2007年10月03日 10時27分 公開

携帯・カーナビ市場で重要性が増す「デジタル地図」 神尾寿の時事日想:

デジタル地図を提供する企業を“囲い込む”動きが活発になってきている。携帯電話用コンテンツやカーナビ揚データとして、デジタル地図の重要性が増しているためだ。

[神尾寿,Business Media 誠]

 10月1日、フィンランドのNokiaが、デジタル地図サービスの最大手である米NAVTEQの買収で合意したと発表した。NAVTEQ買収は、NokiaがNAVTEQ株式を1株78ドルの現金で買い取る形で行われ、買収総額は81億ドルに上る。取引は、NAVTEQ株主の承認などを経て、2008年第1四半期に完了する模様である。

 デジタル地図サービスの分野では、これまで北米のNAVTEQと欧州のTele Atlasがグローバル市場をめぐって競争を繰り広げてきたが、Tele Atlasは今年7月にオランダのカーナビゲーションシステムメーカーであるTomTomが買収を発表している

 Tele Atlasのデジタル地図提供先にはGoogleやYahoo!、Microsoftなどのネット企業に加え、Nokiaも名を連ねていた。しかし、Nokiaは成長著しいPND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)分野はもとより、携帯電話向け地図サービスでもTomTomと競合する関係にある。今回のNokiaによるNAVTEQ買収は、サービスの基盤となるデジタル地図の提供企業を傘下におくことで、“川上”をこの分野のライバルであるTomTomに押さえられることを避ける狙いがある。NAVTEQは欧州市場ではTele Atlasの後塵を拝しているが、一方で北米とアジア市場に強く、多くのカーナビ・PNDメーカーにも地図供給をしている。買収総額81億ドルという価格は、デジタル地図を使った応用サービス市場が広がる中で高い金額ではない。それだけの潜在可能性が、デジタル地図サービス市場にはあるのだ。

日本でもデジタル地図サービス囲い込みの動き

 デジタル地図および関連サービスの“囲い込み”は、海外だけの話ではない。日本でも今年6月にNTTドコモがデジタル地図サービス企業のゼンリンデータコムに出資、協業体制を築くとともに、デジタル地図供給会社のゼンリンとの関係を強化している。ドコモは今年の冬商戦向けモデル「905iシリーズ」を皮切りに高速通信技術HSDPA対応のFOMAラインアップを急速に拡大していくが、デジタル地図サービスは高速化のメリットをユーザーにアピールしやすいコンテンツだ。また、デジタル地図を土台とする関連サービスやローカル広告ビジネスの市場は拡大の過渡期にあり、そこにドコモが関わることはキャリアビジネスの裾野を広げる上でも有効だ。

 一方、ドコモよりも早くGPS・デジタル地図サービス分野に乗り出したKDDIは、ナビタイムと協業する「EZナビウォーク」でGPSナビゲーション分野のノウハウを蓄積するほか、今年夏から投入した新サービス「EZガイドマップ」「災害時ナビ」で地図の活用サービス分野を開拓している。EZガイドマップや災害時ナビでは、ぐるなびや角川クロスメディア、アジア航測といった“地図上の付加価値コンテンツ”を持つ企業との協業体制を築いており、この分野のコンテンツ・サービス獲得に力を入れている。

 デジタル地図サービス分野は今後、携帯電話とPNDを両輪に大きく成長していく。その市場をめぐって、国内外でキャリア・メーカーによるデジタル地図サービス企業の争奪戦や協業、合従連衡がさらに起きる可能性は十分にある。ゼンリン、インクリメントPの2大デジタル地図供給会社はもちろん、ナビタイムやゼンリンデータコム、MTI、エディアなどのナビゲーション・地図サービス企業、さらに付加価値的な地図コンテンツやローカル広告を扱う企業などの動向に注目しておいて損はないだろう。

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