何のために投資をするのか?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(後編)分散投資特集(2/3 ページ)

» 2008年08月11日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

「投資によってリターンを求めるべきではない」の真意とは?

――山口さんは以前、「リターンだけを目的にするのは面白くない」と言っていました。誤解を受けることはありませんか?

山口揚平氏

山口 投資はするべきだと思っていますが、「投資=リターンを求めるべきでない」という考えは変わっていません。こうしたことを言うと「なぜ投資をするべきなのか?」といった質問をよく受けます。もちろん私も投資をすることでリターンを手にしたいが、短期売買はやりません。

 大事なことは自分のお金を企業に、そして社会に投資する、という意識を優先させるべきだと思います。企業を「深く知る」という意味でも、投資をすることによっていろいろなことを学べるでしょう。自分なりに企業を深く知っていく作業の中で、最も大切なことは投資をする企業への“共感”です。自分の大切なお金を投資するわけですから、投資する企業への“心の震え”のようなものがなければ投資するべきではありません。

 また忘れてはならない株式投資のデメリットとして、“感情のコスト”が負担になることが挙げられます。保有している株価が下がったときの「ストレス=感情のコスト」は見逃しがち。私の場合は感情のコストを支払うのが嫌なので、好きな銘柄を長期投資することしか考えていません。株価が上がることに注目するというよりも、株主となることで企業とコミュニケーションができたり、配当をもらえたりすることで満足しているので、感情のコストは小さいのです。

山崎 私は投資をすることとお金を切り離すことについては、疑問を感じます。投資とはお金を殖やすための技術であり手段。そして企業の資本に参加していることなので、どれだけ自分のお金を投資をすればいいのか? ということは合理的に考えればいいと思う。

 しかし投資はどうせお金の問題なんだから、とドライに割り切ろうとしたとき、よくよく考えると割り切れない部分があることも確か。どのタイミングで株を買えばいいのか、と考えても結論はなかなかでません。分散して買った方がいいのか、それとも集中して買った方がいいのか、こうした問題は割り切ることが難しいのですが、基本となる考えを明確にしていれば答えはでます。

 基本となる考えは人それぞれで、プロが特別難しいことをしているわけではありません。個人投資家でも集中投資が効率的にリターンを手にすることができると思えばやればいいでしょうが、率直に言って有利ではないでしょう。分散投資の方がリスクが小さいから自分に向いていると理解して、中長期で運用するのが基本です。何れにせよ「自分はこれだ!」という基本を明確にしてから、投資をした方がいいでしょう。

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