壊さない、という選択――香港島「THE PAWN」編集長ヨシオカの香港レポート(1/2 ページ)

» 2008年11月11日 07時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 香港島の灣仔(ワンチャイ)エリアに、2008年4月にオープンしたばかりながら、非常に話題になっているレストランがある。

 英国料理を供するその店の名は「THE PAWN(ザ・ポーン)」。“質屋”を意味する。英国料理のレストランの名前としてはいささか風変わりな名前だが、名前の理由は明快だ。なぜならこのレストランは、もともと質屋だったからである。

2008年4月にオープンしたレストラン「THE PAWN」。この建物の2階、3階、屋上で営業している

19世紀末の質屋を、最新のレストランへリノベーション

 ザ・ポーンがあるワンチャイは、香港島の北部に位置する。昔ながらのアパートや市場が立ち並び、ちょっと下町情緒もあるエリアだ。香港の地下鉄・MTR港島線が停車するのでアクセスは便利だが、両隣の「中環(セントラル)」や「銅鑼湾(コーズウェイベイ)」が高層ビルが林立して華やかな印象なのに比べると、少々地味な印象の街であることも事実である。

ワンチャイは古い建物も多く残る地域。一歩裏に入れば昔ながらの小さな個人商店も多い

 このワンチャイの再開発を進めているのが、半官半民の組織である「アーバン・リニューアル・オーソリティ」(URA)。URAのワンチャイ再開発計画の中でも特に注目されているのが、ザ・ポーンなのだ。

 URAはワンチャイ再開発にあたり、古い街並みを壊してピカピカの高層ビルを建てるのではなく、歴史的に意味がある建築物を選定して残していく方針をとった。しかし保存する建築物を買い上げ、修繕するにはコストがかかる。そこで買い上げた建築物を、レストランなどの商業施設としてリニューアルし、建物の保存に協力することを条件に希望者に貸し出すことにした。その家賃収入をワンチャイの再開発・建築物保存に充てるのだ。

ザ・ポーンで供する料理は英国家庭料理をベースにしている(左)。2階、3階にはバルコニー席があるのが珍しい(中)。質屋として営業していたときの写真(右)

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