どうすれば評論家になれるのか? その方法とギャラ山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年01月15日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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 原稿料・印税は、書く材料の仕入れに掛かる時間を考えると、大手企業の管理職の時給にかなわないかもしれない。書きたいだけ書けるようにちょうど良く仕事の依頼があるとは限らないし、また、生理的な感覚として書き続けられるというものでもない。それでも、雑誌などの連載を持つようになると、多額ではなくとも安定した収入源になるし、対外的な露出のチャネルにもなるので、フリーの生活を考えるとこの種のものの継続性は「ありがたい」

 単行本は、大まかに言って売り上げの1割が印税として著者に入るが、概していえば、手間に対して効率のいい仕事ではない。ビジネス書などの場合、初版は数千部でスタートすることが多く、それでも重版が掛からないということが、しばしばある。継続的に万単位で本が売れる著者は、ごくわずかだ。「本を出せる」というレベルと、「売れる本を書く」というレベルの間には大きな距離があり、この距離を詰めるためには“運”も必要だ。

 テレビの出演料についても触れておこう。レギュラーで出る番組で、その個人が特別に大きな役割を果たすようなものでない限り、評論家、大学教授などのいわゆる文化人に関しては、民放の間で「文化人価格」と称せられる、ゆるやかな談合価格がある。それはどこの局のどの番組に出ても、あまり変わらない。文化人価格は「タレント価格」の数分の1であり、1時間の番組に出て数万円ほどだ。打ち合わせや準備も含めて収録の番組の拘束時間などを考えると、これもそう割のいい仕事ではない。

「割がいい」のは講演

 時間と手間を考えて「割がいい」という意味では、たぶん講演が一番だろう。講演料は人によって違うし、同じ人でも場合によって受ける講演料には幅がある。

 低めのケースを挙げると、民間シンクタンクの若手研究員(専門家だが無名だというレベル)で1時間半程度の講演料が20万円くらいのことが多い。講演の性格にもよるが、知名度のある評論家なら、もう少し高いはずだから、講演の数が増えると、評論家もある程度は儲かる商売になる(「講演」の市場構造も別途書いてみたいテーマの1つだ)。

 ただ講演は、時間と場所が随分前から指定されるし、準備も必要だ。別々のテーマの講演をばらばらと引き受けると準備に費やす時間が増えるので、効率が上がらない。また、講演は概ね知識のアウトプット一方の仕事なので、講演の仕事が増えると、インプットが減る弊害がある。

 島田洋七さんの「がばいばあちゃん」のようなどこででも通用するようなキラー・コンテンツを持っている人は別だが、普通の評論家の場合、講演は、ほどほどにしておくべきだろう。

 何事もバランスが大切だ。

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