アキバメイドが語る! メイド喫茶産業の舞台裏(後編)現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(3/4 ページ)

» 2009年05月26日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

時給850円でもメイドを続ける理由

 ここまでは経営サイドの視点でメイド喫茶を見てきたが、ここからはメイドの視点からメイド喫茶を見てみよう。

 前述の通り、アキバメイドの標準的な給与は時給850〜1000円と、普通の喫茶店と同程度、むしろ山手線沿線という立地を考えれば低いくらいだ(六本木のサブウェイは時給1000円だ)。また、@ほぉ〜むcafe以外のメイド喫茶はチェキのバックマージン制をとっていないことも多いので、アイドル業に精を出す(通常の店舗でもイベント商法のために勤務時間外にダンスの練習をしたりと色々と大変である)直接的な金銭的インセンティブも少ない。

 それでも、彼女たちが“お給仕”をやめようとしないのはなぜだろうか。

 「1つには、アキバのメイドであるというステータス。やっぱり、アニメとか好きな子が多いから、そういうものへのプライドは高いよね。アイドル志望の子だと、ここを足がかりにすることもできるから、そういった動機の子も多い」

 やはり、非金銭的なインセンティブというのはなかなかに大きいようだ。

ブログやmixiでの営業は重要らしい

 「それに、そういうキレイゴトの面もあるけれど、やっぱり大きいのは、案外貢がせることができるってことだよね。旦那さま(男性客)とメアドとかは交換できないから、ブログとかmixiとかで営業することになるんだけど、ブログに『〜が欲しいなぁ』って書くと、持ってきてくれる人も多い。キャバとかと違ってプレゼントの見返りを求められないのが楽かな。中には、誕生日イベントを見計らって、価格帯別に欲しいものをランク付けして書いている子までいて、そういうのを見ているとがめついな、とは思うけどね」

 あいりちゃんは、メイドの掛け持ちは大変だということで、居酒屋でもバイトしているのだが、居酒屋と比較するとメイド喫茶の離職率はかなり低いようである。大きな裁量権の付与や承認欲求の充足、漠然とした次へのステップアップへの希望、離職率を低下させる方策としては一般化できる話である。

 先日、経営戦略の授業で「シャープよりサムスンの方が東欧における工場の生産性が高いのは、現地スタッフへの裁量権の移譲が大きな要因の1つだ」という話があった。それによくよく自分自身を振り返ってみると、打たれ弱い現代っ子であり、特にマスコミ志望でもない筆者が、心ない匿名の中傷に耐えながらもコラムを続けているのも、好きに何を書いてもいい裁量権や、自分の文章がmixiニュースやYahoo!ニュースといったメディアにも配信されることによる承認欲求の充足、それに自分の著作の宣伝ができること、本や雑誌などといったメディアからお声がかかるかもしれないという淡い希望があるからだ。

 結局、メイドも筆者も同じ枠組みの中で踊っているようである。ちなみに筆者なら、プレゼントのように可愛らしいものではなく現金が欲しいのだが……。いや、品行方正な東大生である筆者はそんな即物的なものより、あなたの温かいはてなブックマークやmixi日記のコメントの方がもちろんうれしいというのはここだけの秘密だ。

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