原宿ファストファッション戦争はどこへ行く?それゆけ! カナモリさん(2/3 ページ)

» 2009年10月21日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

原宿で実際に見てみた!

ZARA

 原宿のファストファッションブランドの多くは明治通りに並んでいる。唯一ZARAは、明治通り沿いではなく、少し明治神宮寄りの表参道通り沿いにある。物理的に距離を置いているだけでなく、ファストファッションの中でもZARAが最も特異な存在なのではないだろうか。

 ZARAは流行と同期しない独自のファッション作りをしているといわれ、常に多品目少量生産した商品を高回転で店頭に並べていく。日本国内での店舗展開も最も早く、11月には渋谷に50店目を開業するという。価格的にも少し高めであるため、例えば筆者が教鞭を執っている青山学院大学などで若年層から好きなブランド名を聞いても、その名が挙がることはまれだ。

Creative Commons.Somes Rights Reserved.Photo by Daquella manera

フォーエバー21

 では、どのブランドが青学生から支持されているかといえば、女子学生を中心にフォーエバー21の名がまず挙がる。「全身コーディネートして1万円」という価格の安さが人気の秘密である。

 ただし、実際にその商品を見ると価格なりの品質であり、40代も半ばを迎える筆者は正直袖を通す気にはなれなかった。「オッサン向けに商売しているわけじゃねーんだよ」と言われれば、まさにその通りでゴメンナサイである。店内には若い子ばっかりであるため、品質よりも価格が重視されているのは確かで、ニーズにはピッタリマッチしているのだろう。

Creative Commons.Somes Rights Reserved.Photo by ttarasiuk

H&M

 フォーエバー21に隣接したH&Mの店内に入ると年齢層がぐっと上昇する。20代男女や小さな子供を連れた家族、筆者と同年代の人もちらほらいる。価格帯は少々上昇するが、それでもまだ、全身コーディネートして2万円程度ではないだろうか。品質はフォーエバー21よりは少し良いように思う。1万円を超える商品はめったになく、「安いから、まぁいっか!」と筆者も1枚ぐらいは買ってしまいそうになる。

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TOPSHOP

 H&Mにほど近いラフォーレ原宿にはTOPSHOPが入っている。男性用はTOPMANという名前だ。価格はぐっと上昇し、ジャケットやコートのようなしっかりめの品は2万円を超える。

 TOPSHOPは2006年9月に日本に進出してきた老舗といえる存在だが、ファストファッションの中では相対的に高価格帯に位置するようになってしまった。その分、品質はあくまでファストファッションの中でという限定条件付きながら、ほかよりも高い。ファッション性も筆者個人の趣味の中では一番良いように思った。赤いフード付きコート2万4000円をあやうくお買い上げするところであった。

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ファストファッション3社のすみ分け

 各店の様子は上記の通りであるが、各店はまさにすみ分けの状態であるといえる。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る「バリューライン」で表現してみる。ファストファッション業界が前提なので、「価値」は「ファッション性」は高いことが大前提なので、あえて「品質」とする。

 安くてそれなりの価値のもの=「エコノミー戦略」。これはフォーエバー21だ。中間価格で、中間的な価値のもの=「中価値戦略」。これが H&M。高くて価値の高いもの=「プレミアム戦略」。これがTOPSHOPである。つまり、各店はバリューライン上ですみ分けをしているのである。

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