冷え込む朝に、うっかり二度寝。時計を見てびっくりし、大慌てで駅に向かう。すると、いつものホームに見慣れぬ古い電車が停まっていた。まるであなたを誘うように……。そのとき、あなたの心が解き放たれる。ふだん疑問に思わなかった日常から逃れるように、古い電車に乗る。不思議な体験のはずなのに、車内には当たり前のように利用する人々がいる。
今回は、そんなウソのようなホントの話をしよう。大宮駅08時51分発「快速むさしの」八王子行きだ。
2年前に『旅の贈りもの 0:00発』という映画が公開された。「偶数月の第3金曜日の大阪駅で、0時ちょうどに行き先不明の列車が出発する。その列車に乗った乗客たちが、終着駅の町で過ごし、やがて町の人々に癒されていく」という物語だ。行き先不明の列車の機関車はEF58の150号機。流線型が特徴で、花形特急列車の数々を牽引した形式である。3両目のマイテ49も東海道線の特急列車として活躍した展望車だ。この列車が持つレトロな雰囲気は、乗客の日常と非日常を結ぶアイテムとしてピッタリの存在感を持っていた。鉄道ファンとしては「非電化路線にどうして電気機関車が?」という突っこみどころもあるものの、列車の旅で人が癒されるというストーリーは悪くなかった。
さて、ミステリー列車に話を戻そう。駅に列車があることに違和感はないが、イベントでもない日常の時間にレトロな列車が停まっていれば、不安と好奇心を刺激するはず。そういえばあの『銀河鉄道999』も「二度と帰らないお客のために、わざと古めかしいデザインの列車に」という演出でC62蒸気機関車の姿をしていたそうだ。
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