「いつまでそこにいるの?」――人はいつ、どこで“フミダス”のか?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2010年01月14日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike


 新年というのは、何かに踏み出すためにはもってこいの時期である。

 暮れの大掃除。電気傘に積もるちりを払い、くもったサッシを磨くうちに“心の大掃除”がしたくなる。年が明ければ駅伝の苦痛に満ちた顔の選手たちを見て「明日から走ろう」とメラメラ思ったり、帰省のUターンでは大渋滞に巻き込まれて「オレの人生、滞っていないだろうか?」と考え込む人もいるのではないだろうか。

 その心理をうまく突いたのが、新年1月1日から生涯学習のユーキャンが展開する“フミダスムービー”。その第1話『捨て猫OL』では、女優の蒼井優さんが職場の誰からも必要とされない松本マユミ役を好演。ヘマばかりの仕事ぶりで「松本クンにまかせた俺が悪かった」とまで上司に言われる始末。だが、あるきっかけで“フミダス”ことに――。

出典:ユーキャン

フミダスストーリー

 マユミは河原で段ボールに捨てられた仔猫を見つける。「誰か拾ってください」と書かれているのを見て拾おうとするものの、猫毛アレルギーなのか、くしゃみ連発で断念。そして捨て猫に、職場で誰にも相手にされない自分を投影。職場では、誰もチェックしてくれなかったマユミの企画書が提出されて問題になり、彼女の上司まで叱責されるハメに。

 先輩の川崎さんは、その企画書にポスト・イットをたくさん付けて、「こんなもんじゃないだろう?」と言い捨ててマユミに返した。良い先輩だ。だが、自信をなくして落ち込んだマユミは、捨て猫のように段ボールから職場をのぞいて「誰か私を必要として下さい!」と訴える。

 誰一人、段ボールにも、そこからのぞくマユミにも気付かない。だが、ずっと向こうに座っていた川崎さんだけはそんなマユミをじっと見て、そして言う。

 「いつまでそこにいるの?」

 蒼井さんの演技が素晴らしいだけではなく、随所に味わい深いシーンがある短編ドラマ(約10分)に仕上がっている。ドラマ中に通信教育のPRや、ムービー終了後は自分に合った資格の選び方まで組み入れている。その巧みさも見事であるが、私は「人はなぜ、どこで、そしていつフミダスのか?」が気になった。

出典:ユーキャン
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