東京と沖縄に蠢く、“新ヤミ金融”に迫る(1/2 ページ)

» 2010年01月19日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 10日で1割の金利を要求する「トイチ」など、高金利で厳しい取り立てを行い、社会問題にもなったヤミ金。最近は鳴りを潜め、代わって「優しいヤミ金」と呼ばれる業者が増えてきているという。もちろん正規業者ではないので、実態を把握することは難しい。しかしヤミ金問題を10年以上取材し続けるノンフィクションライターの窪田順生(くぼた・まさき)氏が、東京と沖縄でうごめく、悪徳業者の実情に迫った。

※本記事は金融庁で行われた「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」(1月14日)で、窪田氏が語ったことをまとめたものです。

優しいヤミ金、5つのポイント

 まず窪田氏は優しいヤミ金の特徴として、5つのポイントを挙げた。

優しいヤミ金、5つのポイント

(1)金利が優しいのではなく、「取り立て」が優しい。金利は10日で30〜50%

(2)10年前と違って、ヤミ金がハードな取り立てをする「理由」がなくなった

(3)ほかに貸してくれる業者がないので、完済後も利用される

(4)「孤独な人々」に対し、親身になって相談にのる(世間話など)

(5)警察に通報したら「もう誰も貸してくれない」という恐怖(信頼関係を構築)

写真と本文は関係ありません

 優しいヤミ金と呼ばれる男と同行取材を試みた窪田氏。東京駅の近くにあるカフェで、その男と一緒に“客”を待った。男はかつてのヤミ金のように首からネックレスをかけたり、派手なスーツを着ているわけではない。きちんとしたスーツを着ているので、ごく普通のサラリーマンにしか見えなかったという。しばらくすると“客”である、22歳の女性(無職)が現れた。彼女も派手ではなく、質素な身なりだったので「周囲から見れば、友達3人がコーヒーを飲んでいるだけにしか見えなかったのでは」と、窪田氏は振り返る。

 そして優しいヤミ金の男は、何の効力もない借用書を取り出し、彼女に説明を始めた。「金利は○○%で……」などと、丁寧に説明を始めた。しかしこれは、男の“作戦”だった。わざと話を難しくすることで、彼女に「そんなことはいいから、早くお金を貸して」と思わせることに狙いがあったのだ。実際、彼女は「で、10日後にいくら返せばいいのですか?」と、しびれを切らすように聞いてきた。「彼女は被害者にも関わらず、その男に『ありがとうございます』と述べ、その後は世間話で盛り上がっていた。その姿はまるで友達とでも話しているようだった。ヤミ金といえば『人を食い物にする』といったイメージが強いかもしれないが、この2人の姿を見ていると、一定の信頼が関係が成り立っているように感じた」という。

 優しいヤミ金が貸す金額は、基本的に小口だ。1人に対し、3〜5万円といったケースが多い。そのため「3万円借りて、10日後に4万5000円返してください」と言われても「高くない」と感じる人が多いようだ。実際の金利は50%なのに……。

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