日本航空再生の青写真は描けるか――稲盛和夫新会長就任会見：（ほぼ）完全収録（4/5 ページ）

[堀内彰宏，Business Media 誠]

国際線のないJALのイメージはわかない

――前原誠司国土交通大臣が会見で「国際線の2社体制を維持するかどうか検討する必要がある」とおっしゃられましたが、会長はJALの国際線の将来性についてどのようにお考えですか？

稲盛　前原大臣がどうお考えなのか詳しくは知りませんが、JALのイメージというものを考えた時、おそらくどんな方でも“国際線のないJAL”のイメージはわかないだろうと思います。

　特に海外で働いていらっしゃる方々（にとっては特別です）。先日も私のブラジルの友人が訪ねてきて、「どうしてもJALに乗りたい」「JALに乗ったら国に帰った感じがするんだ」「JALというのは海外に移民で行って、何十年も働いている者から見たら心のよりどころです」「何としてもその事業を止めないでください」と言っていました。私が若いころに初めて海外に行ったのもJALです。そのJALの国際便をなくすとJALのイメージが崩れると思っているので、私はJALは国内線も国際線もともに発展していくような運営をしていきたいと考えています。

――再生をしていく上で、国際線の大幅な撤退や規模縮小はお考えですか？

大西　規模の縮小自体は国内線、国際線両方とも実施するというのが前提なので、国際線は縮みます。

――大規模に縮小されるのでしょうか？

大西　強靭（きょうじん）な体質にしていくためにどうしたらいいのかということで、ある基準を設けていわゆる採算性の悪い路線を切っていくことを目指しています。採算性の良いところまで切るというのは体質を悪化させるので、これはないと思います。

　まずは採算の悪い路線を申しわけないですが切らせていただいて、我々が体力を付けた後に再度、先ほど会長からも話があったように公共性がある部分に展開していくという打ち出しをしたいと思っています。

――ということはかなりの路線を撤退される可能性もあるということですか？

大西　現在我々が案として提示している路線は、“不採算な路線”という仕切りで考えている路線です。今、世の中にいろんな数字が出ているので、どれが頭の中におありか分からないのですが、少なくとも再生計画案の中でお示ししている路線は不採算路線というものに該当する、と考えていただいて結構だと思います。

――バースデー割引などを打ち出していますが、公的支援を受けながら安売りを行うのは公平な競争とは言えないのではないでしょうか？

大西　まったく将来につながらない過度の安売り、ということであればご指摘の通りだと思います。バースデー割引を復活させましたが、お客さまから「復活してほしい」という声が大きかったことがありますし、我々の認識としては「ゼロサムゲームをやっている運賃ではない」と思っています。パイを取り合う運賃設定ではなくて、今まで航空に興味を示していないお客さまに訴求できる商品だと認識しています。

バースデー割引（出典：日本航空）

外資との提携は

――2月中旬にも出てくるという外国航空会社との提携についてどのようにお考えですか？

稲盛　私は先週着任したばかりで、まだ4日しか会社に来ていませんが、アライアンスについては社内でも従来からずっと検討していることで、相手側の会社からもいろいろアプローチがあるので、なるべく早急に結論を出さないといけないと聞いています。今、社内で鋭意検討していますので、具体的にはお話しできませんが、なるべく早い時期に決定したと思っています。

――もう少し具体的なタイミングと、今どのような提案を受けていて、今のところどちらに傾いているのかを教えてください。

大西　外資との提携の時期は先ほど会長がお答えした通り、「できるだけ早く」と思っています。「具体的にいつまで」というより、相手のこともあるので「できるだけ早く決めるべきものだ」と思っています。

　「今、どちらに傾いているか」というと、おそらくニュートラルです。一長一短ある世界なので、会長が先ほど話されたように、あまり従来の議論に引っ張られずに、もう一度新体制の中で白紙で考えてみたらどうなのかという議論を真剣に社内で続けている最中です。

――貨物事業は今後コアビジネスに入ってくるのでしょうか。また、日本郵船と貨物事業の統合について協議されていますが、そのスケジュールについて教えてください。

大西　これも明確にお答えできなくて申しわけありません。貨物事業と外資の提携については早急に結論を出すべきだということで、稲盛会長にも随分時間をお使いいただいていて、社内でのこれまでの議論をいったん白紙に戻して、新経営体制の中でどう考えていくんだという議論をまさしく今やっているところです。そんなに時間を置かずに決めて、「こういうことになります」とみなさんにお話ししたいと思います。現時点で何かコメントできるということはありません。