NHK朝の連ドラ『ゲゲゲの女房』は敗戦なのか?(1/2 ページ)

» 2010年04月20日 08時00分 公開
[増沢隆太,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 NHK朝の連ドラでは、前作『ウェルかめ』が歴代最低の視聴率だったことで批判を浴びました。今作『ゲゲゲの女房』では放映時間を移動させるという、テレビメディアにとって最大級の冒険をしてまで対処に当たったNHKは、エース級女優ということで松下奈緒さんを主役にあて、原作も好評な水木しげるの奥さんの自伝小説という、これまた万全の展開によるスタートです。

 しかし……、第1回目の放送の視聴率は、最低だった『ウェルかめ』を下回る史上最低記録更新の14.8%(関東地区)となってしまいました。ネットニュースなどは「NHK大失敗!」「史上最低記録更新!」とはやし立て、暗雲立ち込めるスタートです。松下奈緒さん始め、製作スタッフの方々はさぞかし嫌な幕開けとなったのではないでしょうか。

 「麻雀はゲタを履くまで分からない」とおっしゃたのは阿佐田哲也先生でしたっけ? 違うか。上州虎さんだったかな? それとも、ドサ健か(全部麻雀放浪記キャラ)。戦争も同じです。

 戦争で一番難しいのは殿(しんがり)、つまり退却です。敵はかさにかかって攻撃し、味方は敗色濃厚から士気は低下。最も不利な条件下での戦いを余儀なくされます。しかし、まさにここが指揮官の腕の見せどころ。落ち込む部隊の士気をいかに維持し、戦いを継続させるかが求められます。

 『スタートレック』のカーク船長は、クリンゴンやロミュランの攻撃を受けるとただちに「被害を報告せよ」とカトーやチェコフに命じます(今回はマニア向け用語ばかりですいません)。まず状況を認識し、検証することで、対策が生まれます。指揮官自らが浮ついたり狼狽(ろうばい)しても、軍、つまり組織崩壊は早まるだけです。指揮官の自律の姿勢は何より大事な素養と言えるでしょう。

 そしてまた、状況をある程度把握した上で、こうした環境下で完全なものなど取れるわけがないことも理解し、後はカンで判断すること、判断できる決断力が欠かせないのです。「カン」には理論を超越する学習効果が含まれています。歴戦の勇士は時として大学出の将軍を上回る判断力を持つものです。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.