2帖の部屋に住むしかない……無料低額宿泊所の実態貧困ビジネスの現実(2/3 ページ)

» 2010年04月23日 08時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 無料低額宿泊所は第二種社会福祉事業に該当するわけだが、第一種社会福祉事業には養護老人ホームであったり、救護施設などがある。本来であればそうした施設がきちんと機能しなければいけないのに、それらの施設に頼れない状況があるので無料低額宿泊所に人が流れ込んでくる。このように見てみると、無料低額宿泊所と行政は利益関係がある仕組みなになっているのだ。

無料低額宿泊所の問題

 無料低額宿泊所ではどのようなことが起きているのだろうか。1つめは入居している人に対し虐待、権利侵害が犯されている。通帳や印鑑を管理されることが多く、身体的な暴力であったり、暴言なども起きている。2つめは入居者の生存権や幸福追求権が侵害されているのではないだろうか。2帖や3帖といった狭い部屋で長期間生活するというのは、人間の生存権を侵害しているといっていいだろう。また一時的な宿泊施設であるということを多くの行政が忘れている。無料低額宿泊所に5年以上も住んでいる人がいるが、そこから「転居しましょう」という提示はほとんどない状況だ。

無料低額宿泊所で問題が発生する理由

(1)十分な説明がないまま施設サービスを利用する人々の存在

(2)一時的な宿泊所であるにもかかわらず、長期化する入所期間

(3)多様な疾病や障害を有する入所者に対応できない職員配置

(4)未整備な苦情対応窓口

(5)社会福祉法による位置づけがあいまいで、罰則規定が貧弱

(6)第一種社会福祉事業の機能不全

 それでは無料低額宿泊所の問題をどのように解決していけばいいのだろうか。実は無料低額宿泊所に頼らなければいけない地域が存在していることも事実。確かに施設に入るのはとても簡単だが、それだけで貧困の問題が解決するわけではない。まずは行政が、無料低額宿泊所以外の選択肢を提示しなければいけないだろう。そして不動産市場がきちんと機能していれば、こうした施設を利用しなくても済む。良い不動産業者と連携を図りながら、無料低額宿泊所に代わるものを作っていかなければいけないだろう。

無料低額宿泊所の部屋の様子

 社会福祉というのは、“縦割福祉”とも呼ばれている。例えば高齢者が利用できるのはこの施設、障害者はこの施設、などと決められている。しかし無料低額宿泊所は“誰でも受け入れている”といった状態。既存の社会福祉が対象としてこなかった“選別してきた人たち”を受け入れる、新たな施設が必要なのではないだろうか。

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