フセイン・チャラヤン初の大規模個展(2/2 ページ)

» 2010年06月16日 08時00分 公開
[草野恵子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム
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 幼い頃はパイロットになりたかったというチャラヤン。そのため「空を飛ぶ」という行為には、とりわけ思い入れがあるようだ。それは「休息」(2006年秋冬)という作品にも、端的にあらわれている。飛行機の翼が壁から突き出し、その大きなフラップがゆっくりと上下に開いていく。

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エキサイトイズム 「休息」2006年秋冬(C)hussein chalayan

 フラップの中にはぎっしりと埋め込まれたスワロフスキーのクリスタルが入っており、まばゆいばかりの光を放つ。フラップの開閉はゆっくりとした呼吸にも似ており、その横の壁には、椅子に座った乗客が静かに目を閉じて着席している。その人間と翼との不思議な関係性が「飛行機で空を飛ぶ」という現在では当たり前の行為の、エキサイティングな側面をあらためて優雅に提示してくれる。そして、それは境界=国境を越える行為でもあるのだ。

 最先端のテクノロジーを巧みに取り入れるチャラヤンだが、中でも「リーディングス」(2008年春夏)のギラギラとした先進性には息を飲む。スワロフスキーのクリスタルと200本もの可動式レーザーが組み込まれた2体のドレスに、ジャケットと帽子。モーターで動くカスタムメイドの留め具でレーザー光線を服に固定し、周囲へ赤い光線を挑戦的に放つ作品である。太陽崇拝とセレブへの礼賛に着想されたというこの作品を、あなたはどう感じるだろうか。

エキサイトイズム 「リーディングス」 2008年春夏 photo: Nick Knightt

 「世界がどのように関係し合っているのかに興味がある」と語るチャラヤン。グローバル化が進む現在、彼の独特の視点は未来を切り開く礎となるかもしれない。20世紀と21世紀の狭間に生まれるべくして生まれた希有なアーティストの存在感を肌で感じる絶好のチャンス、ぜひ会場に足を運んでみてほしい。6月20日まで。

フセイン・チャラヤン ファッションにはじまり、そしてファッションへ戻る旅

開催中〜2010年6月20日(日)

東京都現代美術館 東京都江東区三好4-1-1

10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)、月休


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