よくよく考えるとおかしい……超党派での消費税議論藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年06月28日 08時22分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 前回の時事日想のコラムで菅首相の「腰の引けた発言」について触れた。消費税について自民党の10%案を「参考にする」と語ったことである。それだけではない。「超党派での議論」というのもよくよく考えてみればおかしな話なのである。

 そもそも税金をどう集めるのか、その税金をどう使うのか、というのは政党の最も基本的な論理の基盤であるはずだ。税金の持つ所得再配分の機能を弱めるのか、それとも強めるのか、消費税を中心にするのか、所得税を中心にするのか、低所得者に対して免税するのか、それとも社会保障給付をするのか、年金は保険でやるのかそれとも税金でまかなうのか、などなど、それぞれの政党が絶対に譲れない部分というものがあるはずだ。

 それを「超党派」で議論して、実行に移す前に国民の審判を仰ぐのだと菅首相は言う。しかし、である。もし増税とそのやり方について超党派的にまとまったなら、国民はいったい何を選ぶのだろうか。消費税にあくまでも反対すると言っている共産党や社民党、みんなの党、国民新党などなどに投票するのか、それとも民主党と自民党、たちあがれ日本などの「増税連合」に投票するのかを迫るということなのだろうか。

 だいたい民主党と自民党が税制やら税金の使い道で一致するなら、そもそも2つの党でいる必要はない。それに、いかに財政状況が逼迫(ひっぱく)しているとは言っても、労組がバックにつく民主党と財界がバックにつく自民党(ステレオタイプの見方ではあるが、大きく外れているわけではあるまい)で意見が一致するとは到底思えない。要するに、この菅首相のいう「超党派で議論」というのは、民主党が参院選で不利にならずに責任ある政党というイメージを振りまくための「目くらまし」であると言ったら言い過ぎだろうか。

大胆な財政再建を打ち出した英国

 一方、菅首相が大好きな英国のほうは、大胆な財政再建を出してきた。2014年度までにGDP(国内総生産)の6.3%にあたる財政赤字の削減をするというのである。そのうちの4分の3は支出のカット、残りは増税によってまかなうのだという。これによって2009年度にはGDPの47%に達していた公的支出は41%にまで低下し、国債などによる国の借金はGDPの10%から1%にするという。日本の消費税にあたる付加価値税を17.5%から20%に来年1月から引き上げるほか、区法人税を引き下げる。

 もちろんこれはオズボーン財務相が説明したように緊急緊縮予算である。ただ問題は、これだけの歳出カットをした場合に、果たして景気は自立的に回復してくれるのかどうかということだ。英国も住宅バブルが弾けて、そのために金融機関がいくつも危機に陥った。またエコノミスト誌最新号は、政府支出のカットができるのかと疑問を投げかけている。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.