コラム
» 2010年09月10日 08時00分 公開

メガネスーパーの店頭で歌う男に学ぶ、営業のあり方吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

[吉田典史,Business Media 誠]

海外メディアにも取り上げられる

 渡辺さんにうまく歌うコツを聞いたところ「M.E.G.A.N.E. メガネスーパー!」の「スーパー」のところ一段と大きな声を出して歌うことだという。この部分を「ほかのメガネ店とは違うぞ!」という思いを込めて歌っているそうだ。

 “MCナベチャン”としてのホームグランドは新宿東口店であるが、ときに都内の吉祥寺店、秋葉原店(現在は閉鎖)、さらには大阪店、姫路店、静岡店などに応援として出向く。長いときには、1カ月近くその店に張りつく。姫路店で歌っているときに、お客さんから「吉祥寺店で見かけました!」と声をかけられたことがある。さすがにこのときは、本人も驚いたという。

 渡辺さんは、会社員としてのキャリアを戦略的に作ってきたといえるかもしれない。20代のころは小さな劇団で舞台俳優をしていたが、そこでは「安定した収入を得ることがなかなかできなかった」という。そこで俳優になることをあきらめ、会社員の道へ。メガネスーパーに中途採用として入り、5年前に転機を迎えた。

 ある日、ほかの社員らとカラオケに行ったところ、1人の社員が皆の前で、ラップを歌い始めた。その歌詞は同社のメガネを宣伝したもので、それが大いにウケた。そこで、俳優の経験もある渡辺さんが店頭で歌い始めた。あえて店頭で歌おうとした理由についてこう語る。「メガネ店はお客様にとってハードルが高く、入りにくい印象を与えているように思った。ラップを歌うことで、もっと入りやすいようにしたかった」

 当初は人前で歌うことを「恥ずかしい」と思ったようだが、独特のリズム感と歌詞が一躍話題となる。リハーサルをすることなく、すべてがぶっつけ本番だった。おそらく、元俳優として大勢の前で声を出したり、リズムに合わせて歌うことに慣れていたことが功を奏したのだろう。

 特に秋葉原店で歌うと、反響が大きかった。電気店を訪れた外国人観光客らが興味を持ち、近寄ってきて一緒に歌ったり、踊り出す人もいた。それが口コミやインターネットで伝わり、日本のテレビ局を始め、中国やロシアのテレビ局、さらには米国の経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルでも記事として取り上げられた。

 渡辺さんはインターネットで自分のことを検索するときがある。「いろいろと書かれてあり、ありがたい。感謝をしている」と顔を赤らめて笑う。もしかすると、シャイな一面があるのかもしれない。

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