最悪な上司とつきあう方法吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年09月17日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

お坊ちゃま上司はしたたかだった

 このように観察を続け、Excelに上司の感情とその前後の状況などを少しずつ入力していった。空き時間にそれを見ていると、上司の言動には一定のパターンがあることが分かった。「怒り」「喜び」という感情が周期的に表れるのだ。例えば2〜3日間、部下に怒り、4〜5日目になると、部下を褒めたりする。さらにそれを1週間ほど続けると、また今度は怒り始める。

 わたしはこのとき、察知した。上司は意識して部下の前で機嫌を悪くしたり、よくしたりしていたのである。つまり、部下を褒めてその気にさせる。しかし、それがあまりに長くなると、本人が思い上がるかもしれない。そこで一定期間の後、しかったりして押さえつける。この繰り返しで、部長としての求心力を確保しつつ、組織を動かそうとしていたように思えた。

 彼は無能なお坊ちゃまではなく、実はしたたかな男だったのだ。ある役員が彼のことを「カメレオンみたいに変わり身が早く、要領のいい男」と言っていた。当初、その意味が分からなかったが、こうして上司の癖を観察すると、言わんとすることがよくつかめた。

 上司の言動や思考の癖を確実に見抜くと、わたしは“ヒット”を打てるようになった。自分がどのタイミングで何を言えばいいのか、どのように振る舞えばいいのかが分かったのだ。少々、オーバーに聞こえるかもしれないが、上司の顔を見ると、その瞬間に自分に求められているものも分かるような気がした。

 そしてそれを満たすように努めると、双方の間でしだいに“いい関係”が少しずつだが、できていくのである。自分の言動を振り返り、上司が喜ぶように振る舞うと、彼は明らかにえこひいきをしてきた。そして、わたしに“おいしい仕事”をあてがうようになったのである。

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