コラム
» 2010年10月28日 08時00分 公開

何も語ってくれない人から、コメントをもらう方法相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

[相場英雄,Business Media 誠]

 この幹部とはたまたま共通の趣味があり、日頃から頻繁に会っていた。だが当然のことながら、筆者がどのようなネタを追っているかまでは明らかにしていなかっただけに、突然のタレコミに仰天した次第だ。

 ネタをいただいたあとは、当時のサブキャップにことの経緯を報告した。すると、サブキャップの顔色が変わった。筆者がもたらした「◯△さん」はダークホース的存在で、来るべきトップ人事の候補者リストにすら入っていなかったのだ。サブキャップは猛然と取材を開始したのは言うまでもない。

 その後、この人事情報を巡るカラクリをサブキャップに説明してもらう機会を得た。それによると「同じ系列内では、えてして犬猿の仲の企業が少なくない」という答えをもらった。

 例えば、次のようなケースだ。財閥系の金融機関の中には、同じ名前を冠しながらも、普通銀行、信託銀行など業態が違う場合が多々ある。だが、業態は違えど業務内容が重なる部分も多い。大手自動車や大手プラントに融資をする場合、案件を獲得するに当たって同一系列内の銀行で競合関係になる場合が少なくないのだ。

 これが全く別の財閥や企業グループであれば純粋にライバル視すれば良いのだが、「なまじ身内なだけに、近親憎悪の念を抱くケースが多くなる」(某大手銀幹部)ということになるわけだ。読者の家族、あるいは親戚の中でも財産分与などを巡るトラブルの1つや2つはあるのではないだろうか。

 こうした諍(いさか)いの中では「兄嫁の主張がきつすぎる」「妹の言い方が気に入らない」など、身内の中で情け容赦ない言葉が飛び交うのが常だ。これが典型的な近親憎悪であり、同じ構図が日本の財閥系、その他有力企業グループの間にも存在するわけだ。

 先の「◯△さん」の一件以降、筆者は財閥やその他有力企業グループ内、それぞれの“身内の事情”を調べ上げ、取材に生かしてきた。

 冒頭で触れた通り、各グループは定期的にトップが顔をそろえ、情報をやりとりしている。本来ならば外に漏らしてはならない情報でさえも、“近親憎悪”の果てにこれが記者側に漏れてくる、ということが多々あったのだ。

 筆者がこうしたネタを記事に反映させた回数はわずかだが、取材の過程で漏れてきた“身内同士の諍い”の数々が、現在小説を書く上で大変参考になっているのは間違いない。

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